お金に振り回されないドイツ人

このメンタリティーは、ドイツ人がお金に振り回されていないことをはっきりと示すものである。この国では多くの人が、「時間とカネ」をクールに天秤にかけているのだ。お金以外の価値の比重が高まっているために、金銭の持つ意味が、相対的に低くなりつつある。その点で日本に比べると余裕がある社会なのだ。

現在、ドイツの景気は、1990年の東西統一以来、最も良い状態にある。企業では人手不足が深刻化しているので、企業も若者たちのこうした希望に合わせて対応しなくては、優秀な人材を採用することが難しくなっている。

最小の労力で最大の成果を生む働き方

ドイツ人の行動パターンを理解する上で最も重要なキーワードは、効率性だ。彼らは常に費用対効果のバランスを考えている。端的に言えば、彼らはケチである。仕事をする際に使う労力や費用を最小限にして労働生産性を高めようとする。その傾向が日本以上に強いのだ。

たとえば私の知人に、数学とITに強いドイツ人がいる。彼はエクセルの達人だ。エクセルの演算機能を駆使して、恐ろしく精密かつ複雑な計算ツールを構築できる。極めて複雑な課題について、1つ数字を入れるとエクセルが瞬時に答えを出す。その裏には、精緻で複雑な演算式が入力されている。彼の仕事ぶりは、石を積み上げてケルン大聖堂のような建築物を構築する石工の執念を思い起こさせる。匠の技である。

彼は「私は基本的にものぐさなので、仕事の時の労力をできるだけ少なくするために、エクセルを自動化しているんだ」と説明した。もちろんこの人は、全然ものぐさではなく勤勉な人物である。だが彼の言葉には、仕事にかかる労力を節約して生産性を高めるために工夫を凝らすドイツ人らしい態度が浮き彫りになっている。