宗教家というよりも、革命家である
麻原の一審における弁護側最終弁論は、麻原が宗教家として高い評価を得ていた証拠として、『週刊プレイボーイ』に掲載された中沢氏のインタビュー記事を長々と引用している。
〈聖なる狂気(デヴァイン・マッドネス)という言葉を出したとたんに、あれほどすばやい反応と正確な理解をしめしたのは麻原さんがはじめてでした。この言葉は、宗教の本質に触れているものです。人間のなかには、社会の常識によって囲い込まれた、狭い枠を破っていこうとする衝動がひそんでいます。より高いもの、より純粋なもの、より自由なものに向かっていこうとする衝動です。その衝動を、現実の世界の中で実現しようとすれば、まずは社会の常識と衝突することになります。(中略)
麻原さんは、日本人の宗教に欠けているのは、そういう反逆のスピリットなのだ、と強調しました。そのときの麻原さんは、宗教家というよりも、革命家のような口調でしたが、私はそのとき、ああ、これで現代日本にもラジニーシ(インド生まれの宗教家。渡米し、世界規模で弟子を集めるが、国外退去を命じられる。90年、死亡)のようなタイプのラジカルな宗教家が、はじめて出現することになったのだな、この人はなにか新しいことをしでかす可能性を持った人かも知れないな、と思ったのです。〉
なんと『週刊プレイボーイ』の記事は、地下鉄サリン事件が起こってオウムに一斉捜査が行われ、5月16日に麻原自身が逮捕された直後の、95年5月30日号に掲載されている。