あきっぽい子どもを「幸せ」にしたい

「この商品で最終的に目指したのは、あきっぽい子どもに楽しく使ってもらうことでした。私にも小学生の娘と息子がいます。早く帰った日や休みの日はゲームばかりしており、その横で母親が『宿題は終わったの?』とガミガミ言っていた。子どもの生活実態はイメージできました。親と子の関係性も意識し、進捗状況と向き合える機能も設けています」

商品開発を主導したコクヨの中井信彦さんはこう説明します。完成までに紆余曲折はありましたが、子ども向け商品なので機能はシンプルにしたそうです。

使い方は、まずつまようじなど細い棒でボタンをスライドして「初回スイッチオン」にした後、本体に鉛筆を差し込みます。そしてスマホにダウンロードしたアプリを立ち上げ、初期登録をする――といった流れ。セッティングまでは大人が行い、子どもに渡します。商品に同封される「使い方キット」のほか、2分程度の使い方動画も公開しました。

忖度しない子どもたち

「発売にさきがけて、6月にモニター調査もしました。86人の親子モニターさんに事前に商品を使ってもらい、感想を聞いたのです。結果は、『子どもが進んで家庭学習をするようになった』という回答が約8割。『子どもをほめる回数が増えた』の回答が約9割ありました。開発の軌道修正をしてから、商品内容には自信がありましたが、忖度しながら言葉を選ぶ大人とは違い、子どもは、使い勝手が悪ければハッキリ言う。この調査前は正直言ってドキドキでした」と中井さんは本音を明かしつつ、こんな感想も。

「子どもは興味を持てば、すぐにリアクションがある。達成してごほうびがあるのにも素直に喜んでくれます。実際に開発して、IoTといえど、この商品は“文具”なのだなと思いました」

今でこそ笑顔で語りますが、一時は「開発中止か」というところまで追い込まれたそうです。