2018年2月9日開催の平昌(ピョンチャン)オリンピック。スポーツ熱戦の裏で、別の熱い戦いが始まっている。韓国は、今回のオリンピックのテーマとしてドローンでの警備や、AI搭載の各国語通訳ロボットガイドを投入するなど、高度な情報通信技術を駆使した「ICTオリンピック」を掲げる。大会期間中、インテルと韓国最大の通信企業KTが合同で世界初5G商用デモを実施する予定だ。

同時多数接続でIoTが進化する。(写真=アフロ)

デモでは、360度バーチャルリアリティー(VR)、シンクビューなどの技術が登場。360度VRは、主要競技が360度映しだされ、視聴者は思い通りの角度で観戦できる。シンクビューは、スキージャンプなどで、選手になってジャンプ台からジャンプする感覚が味わえる。

5Gは次世代モバイル通信システムのこと。現在の4Gの100倍の通信速度、1000倍の通信容量を持つ。日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門上席主任研究員の山浦康史さんによると、5Gの画期的なポイントは速さだけでなく、「多数接続」と「低遅延」だという。

多数接続は現在よりも大量の端末を同時にひとつの電波基地局に接続できる。携帯電話をはじめ、ロボットや自動運転車、医療機器、多数のセンサーなど、あらゆるものがインターネットにつながり、人を介さずデータをやりとりできるようになるが、これがIoTを実現するための基盤になる。

低遅延は、通信のタイムラグを1000分の1秒まで抑えられる。たとえば、自動運転で高速走行中、4Gなら前の車がブレーキをかけてから、後続車のブレーキが作動するまでに1m以上進むが、5Gなら数センチですむ。

平昌のデモで、韓国は世界に先んじて5G導入をアピールし、5G規格の標準化争いで主導権を握ることが目標だ。5G関連市場での世界シェア獲得につなげるためだ。

日本も2020年の東京オリンピックでの5G商用化のため、国内でさまざまな実証実験が進んでいる。たとえば、NTTドコモとALSOKは、多数のセンサーで収集したデータを瞬時に解析して異常検知を行う高度警備システムを開発中だ。

オリンピックに向けて産学官連携が強まっていると山浦さん。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど通信大手、NECや富士通、国内の大学、総務省などで、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)を設立して、調査研究を活発化させている。

ちなみにこれまで以上にモバイル通信がさまざまな産業や技術と結びつくため、5GMFは、その市場規模は、20年に460兆円になると予測している。