日本一の東大合格者数を誇る開成高校の生徒は、高校3年の5月まで部活動と運動会の運営に異様なほど熱中し、学校側も彼らに口を出さない。また教師たちから「東大に行け」ということもないという。それではなぜ東大合格日本一が続いているのか。卒業生への取材からその理由に迫る――。

※本稿は、永井隆著『名門高校はここが違う』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

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一番の特徴は、課外イベントの多さ

最高学府・東京大学に38年連続で日本一の合格者数を誇る開成中学校・高等学校。2019年の入試でも187名の合格者を輩出し、堂々の一位である。初代校長は、後に総理大臣にもなる高橋是清。優秀な卒業生を輩出する名門高校の伝統や校風を、OBはこう語る。

「中学・高校併せて開成学園の一番の特徴は、課外のイベントが多いことでしょう。4月には筑波大学附属高校とのボート対抗戦があり、5月の第2日曜日には学園最大のイベントである運動会があります。ちなみに私はボート部の所属だったのですが、2回出場して一勝一敗。今でも当時をありありと思い出す、大事な青春の記憶です」

開成高校の特徴を尋ねた時、意外な答えを返したのは、富士電機元会長で現在は独立行政法人国立公文書館館長の加藤丈夫氏(1957年卒)だ。OBの加藤氏は開成学園の理事長(2000~09年)と学園長(2000~09年)を務め、学園と深く関わってきた人物の一人である。開成の創立は1871年(明治4年)。1891年の尋常中学校令で一時的に東京府立の中学校になった時期もあるが、1901年に再び私立校へと戻り、創立直後の一時期を除いて、一貫して男子校だ。

勉強「しろ」と言わない教師

62年に卒業した直木賞作家の逢坂剛氏は、「56年に中学に入ってから6年間、教師から“勉強しろ”と言われた記憶がありません。とにかく自由な校風でしたね。開成OBには、世界的な演出家の蜷川幸雄さん(55年卒・故人)や、作曲家の猪俣公章さん(57年卒・故人)もいます。私と同様に、それほど勉強に熱心なタイプではなかったでしょうけれど(笑)、個性的な突き抜けた人材が生まれたのは、その校風によるところは大きいでしょう」と指摘する。