写真=市来 朋久

儲からないから、他社はやめてしまう

ECビジネス業界では、プラットフォーマーであるモール運営業者か、自社でものを販売するECサイトつまり販売業者か、基本的にはそのどちらかがプレーヤーとなっています。そのほうが儲かるからです。「なぜ自社で販売をしないのですか?」とよく質問をされます。儲かりにくいことは他社が継続してやらないので、あえてそれをやっているんですよ、と答えています。

逆説的な言い方で、わかりにくいかもしれませんが、実際のところ、「おとりよせネット」を15年以上やってきて、まわりを見渡してみると、以前はライバル的存在もいましたが、自社で販売するマーケットへと出て行ってしまいました。今はライバルがいない独自のポジションを取れていて、十分に利益が上がるビジネスとして展開できているのです。

いつか収入が見込めるかも、で始めたビジネス

事業のもう1つの柱が料理インフルエンサー事業です。いわゆる“お料理ブログ”を集めたサイト「レシピブログ」をスタートしたのは、2005年のことでした。今では料理ブロガー1万7000名が参加し、月間の想定波及効果が約2億400万PVもあるサイトとなりました。

料理ブロガーは、毎日のようにレシピを投稿してくれます。一方でユーザーはレシピを検索します。キーワードで検索できるほか、料理の種類別(ご飯、主菜、副菜・サラダ、パン、麺・パスタなど)、そして、ブロガーやブログ名での検索もできます。好きなブロガーのレシピを参考にする人もたくさんいます。

事業プランは、先行して始めた「おとりよせネット」に連動するサービスとして運営できれば収入がいつかは見込めるかも、という漠然としたものでした。スタートして2年ほど経ってから、人気のレシピブロガーさんがメディアで注目されたりするようになって、食品関係の企業などから問い合わせが入り始めました。「このブロガーさんに弊社のキッチングッズを使ってほしい」とか、「商品の記者発表にブロガーさんに来てもらいたい」といった要望でした。そういうニーズがあるなら、「レシピブログ」をビジネスにできるのでは、とあとから気づいたのです。

ニーズ先行で、生まれてきた事業モデル

そんなニーズから生まれた事業モデルが、料理ブロガーが商品開発のモニターとして関わるモニター・コラボ企画でした。それと、料理インフルエンサー(ブロガー、インスタグラマーなど)を起用したプロモーションやレシピコンテンツの提供でした。料理のスタイリング、イベント、座談会の企画・運営などもやっています。この事業は今では、「レシピブログ」から切り離して、「フーディストナビ」としてサイト運営しています。こうした展開を機能的にやるために、2012年にはキッチンスタジオも造りました。

それに前後して、「レシピブログ」のレシピや投稿内容が、出版社の雑誌や書籍のコンテンツとして通用することがわかってきました。出版社からの打診で始まった『レシピブログ magazine』(扶桑社)は、2013年にムックとして創刊し、シリーズは14冊になりました。また、企業のオウンドメディアやホームページに提供してほしい、そんなニーズも増えてきました。自然発生的に「レシピブログ」には、マネタイズの柱がいくつか出来上がったのです。