「緊張」と「安全」で女性活躍を

女性活躍では「二項対立」に陥ることにも気を付けなければなりません。つまり女性の仕事の「負荷を減らす」か「ストレッチする」かの「二項対立」で考えることです。

たとえば、子どもが生まれたら時短を望むのだから、残業が発生するような仕事からは外してあげようと考えることです。これは女性に対して安全策をとったつもりかもしれません。でも、当人はそれを望んでいないかもしれませんし、旦那さんが育児・家事ができる人で、かなり働ける状況にある可能性もあります。安全策に偏ると、仕事内容が限定的になり昇進できないキャリアコースに固定されてしまうマミートラックを生み出す原因ともなります。

逆に、その女性社員のキャリアアップのためにストレッチした仕事を与えようとしても、「私は子育てに専念したい。ストレッチは希望していない」と思う女性もいます。結局、個別具体的に、一人ひとりと向き合い、マネジメントを行う他はないのです。

女性活躍は「緊張」と「セーフティネット」の両方があって成立します。緊張だけを強いる、あるいは安全だけを確保する支援はうまくいきません。

バンジージャンプを例に取れば分かると思います。高いところから跳ぶ緊張感があるから挑戦するかいがあります。その一方でちゃんと命綱が付いていて、しかも見守ってくれる人がいるという安全面が確保されているからバンジージャンプが楽しいのです。

女性活躍は別段、ゆるい仲良し職場を作るのが目的ではありません。働きたい人は思いっきりストレッチして頑張れて、それでいて心的安全は確保されている環境を作ることが本筋です。緊張か安心かのように「A or B」の二項対立ではなく、「A and B」で考えなければいけません。

経営は二項対立で考えた時点でアウト

両立支援でも、「仕事か育児か」と二項対立させるのではなく、「仕事も育児も」と両方の価値を認めることが重要です。

経営は二項対立で考えた時点でアウトです。たとえば「新規事業か、既存事業か」、どちらを重視するかという議論がよくあります。しかし「or」で考えるとどちらもうまくいきません。新規事業を成功させようと思えば、既存事業の経験を生かさなければいけませんし、顧客リストを引き継ぐ必要があるでしょう。

仕事と育児もそれぞれの経験を生かし合うことができます。夫婦で「どういう子どもに育てたいか」という目標を立て、声を掛け合って2人がチームとなって育児を進めていく。毎日の家事・育児で常にプライオリティを考えながら動く。こんなところは仕事の進め方と同じです。ワークとライフはお互いにエンリッチメントし合える。そういう考えで両立支援をするべきだと思います。

構成=Top Communication 写真=iStock.com