残業当たり前世代のブラック部長
主人公の東山結衣(吉高由里子)は、働きすぎも影響して、階段から落ちて意識不明の重体になり、新卒で入った旅行代理店を辞めた。その後、定時で帰れる会社を探してWEB制作会社に再就職をした。誰よりも生産性高く働き、定時になると退社する。その後は行きつけの中華料理店でビールを嗜み、恋人との時間も大切にしている。決して仕事が嫌いなわけではなく、後輩の面倒見もいい。仕事もできるけれど、プライベートも充実している。
そんな東山は、様々な仕事観を持つ会社員に囲まれている。
部長の福永清次(ユースケ・サンタマリア)は、業績をあげるために、根回しを使い、儲からない案件でも受注してくる。そうやって業績をあげてきたのであり、そういう仕事の仕方が福永流である。若者から見ると、関わりたくない上司に見えるわけだが、福永には福永の理屈がある。福永の設定年齢は、48歳。入社は90年代初めであり、仕事を仕上げるには残業するのは当たり前。何か工夫をするというよりも長時間労働で何とかするという仕事観が当たり前で育った世代である。
“プレッシャー世代”の働きぐせ
副部長の種田晃太郎(向井理)は仕事ができて、責任感も強く、残業を厭わない。いわゆるワーカホリックである。しかし、仕事を優先しすぎたために、東山との婚約が破談になっている。種田の設定年齢は37歳。就職氷河期世代とゆとり世代の間の世代であり、“プレッシャー世代”と命名されている。32歳という設定の東山や後出の三谷佳菜子(シシド・カフカ)もこの世代に含まれる。思春期にバブル崩壊や大企業の倒産を目の当たりにして、打たれ強く、優秀な人が多いとも言われている。
長時間労働者の特徴に関する調査によると、「責任感が強い」「仕事が頼まれると断れない」「協調性がある」「てきぱきと仕事をしている」というタイプが多い(1)。まさに種田である。また、長時間労働者は継続的に長時間労働をする傾向が強い(2)。長時間労働をしてもそれが苦痛にならずに、その状態に慣れて、長時間労働の習慣を形成してしまうのだ。