「女性だから」のピントのズレた施策

実際は、ワーママでもパートナーが家事・育児に主体的なのでバリバリ働ける人もいれば、独身女性でも習い事をしていて残業をしたくない人もいます。「女性だから」という単一のカテゴリーで女性活躍を考えるのではなく、一人ひとり環境が違うことを前提に、それぞれが活躍できる仕事の与え方や支援策を考えなければいけません。ということは、これからの仕事現場では、現場の高いマネジャー力、現場のマネジメント力がどうしても必要になってくるのです。

女性を十把一絡げに考えて打った“勘違い施策”を一つ挙げてみましょう。舞台は女性が数多く活躍する、ある会社です。

この会社では、女性社員の中に「肌が荒れやすい」と話す人がいたので、女性社員に「女性活躍推進」の一環として、「美肌に効く」という「サプリメント」を配ったそうです。ところが男性社員からは「なぜ女性だけ?」と反発され、女性社員からも「女性はなぜ美肌でいなければならないのか」として違和感を唱える人も出てきたようです。結局、大きな分断やしらけを生み出し、この施策はすぐに取りやめになってしまいました。サプリを配ることを考えた人は女性社員を応援するために、「よかれ」と思ったのでしょうが、ピントのズレた施策になってしまいました。

両立支援も同じで、なぜ、その施策を打つのかをきちんと説明できなければ、「なぜ子どものいる女性だけ」と思われるでしょう。

男性中心の組織はもう無理

最近は女性だけでなく男性の働き方も多様になっています。共働きが当たり前の今日、家事・育児を担う男性が増えていますし、高齢化社会で親の介護と両立しなければならない男性もいます。上司に命令されたらいくらでも残業し、会社の言うままに転勤する男性中心の組織はもう無理になっています。

現在は、「女性だからこの働き方」「男性だからこの働き方」という時代から、人材の多様性を受け止め、一人ひとりの環境や希望を前提とした個別の人事管理へ移行する過渡期だと思います。そうしないと今後、人材の確保が難しくなりますし、優秀な社員に残ってもらうこともできないでしょう。