弁護士と経営者のパラレルキャリアで奮闘中。子どもに一生懸命働く姿を見てほしい

ハンガリーで生まれたエスター・ファーカスさんは、9歳のときに家族とともにアメリカへ移住し、ミシガン州で育った。ロースクールを卒業後、ニューヨークの人権団体に在籍し、大手の弁護士事務所に就職。そして独立し、起業したての会社を顧客の中心にした弁護士事務所を構えた。そんなある日、スタートアップを顧客に持つ彼女は、自身の新規事業立ち上げの案が浮かぶ。アメリカで子ども向けの健康志向のお茶があったら、需要があるのではないのだろうかと。

エスター・ファーカスさん。シックな家が並ぶ住宅街に住まいがある。

「アメリカの子どもたちが飲む市販の“お茶”は、大量の糖分が入ったものばかり。健康に良い美味しいお茶を販売できないかと思ったのです」

しかし、それまで培ってきたキャリアとは全く違うので、信頼できる有能な弁護士とタッグを組んだ。2人で市場の状況から生産作業、パッケージ、商品管理や物流に至るまで、さまざまな分野で調査を展開。そして3年前に「プレイ・ティ」をスタートさせた。

(写真上)自宅は日中、オフィスになる。(同下)ブダペストの祖母から譲り受けた銀製のティー・ポット。

オーガニックのフルーツやハーブを使ったお茶は、全米各地の食料品店やアマゾンでも販売されるまでに成長。ビジネスは軌道に乗りつつあるが、並行して弁護士活動も続ける。

「弁護士をしながら常日頃思うのは、どんな場合でも現状での問題点を見つけ改善していくことです。私たちは営業やマーケティングの専門家ではありませんが、この心構えは、自分たちの能力をプレイ・ティで活用させるのに役立っています」

中欧にルーツを持つエスターさんの言葉には、国の繁栄に貢献してきた移民の歴史が垣間見える。地価が高騰するブルックリンでも、高級住宅街のパークスロープに居を構え4年が経つ。移民のなかでも彼女は“成功者”といえるだろう。マンハッタンに顧客たちと会う正式なオフィスがあるが、能率が上がるのでプレイ・ティと弁護士の業務はたいてい自宅で行う。3人の娘に、親が一生懸命に働く姿を見てもらいたいという思いもある。

「事業が順調に進んだら、将来的にはプレイ・ティに専念したい」と話すエスターさん。アメリカンドリームの最終地点はまだ先のようである。

▼1日のスケジュール
6:45 起床。子どもの学校の準備。
7:30 朝食後、自宅で仕事に取りかかる。
9:00 エクササイズかジョギング。
12:00 昼食には時間をかけず、食べながら仕事もする。
15:00 学校へ子どもを迎えに行き、塾へ送る。
17:00 仕事。
18:00 料理。最近は、NYタイムズ紙のクッキング欄のレシピがお気に入り。
18:30 夕食。
19:00 子どもと遊び、本の読み聞かせをする。
20:00 子どもを寝かせた後、再び仕事。
22:30 読書後、就寝。
▼my favorite
●趣味→トライアスロンとスキー ●愛読書→ジェームズ・ボールドウィン著『ジョヴァンニの部屋
エスター・ファーカス(Esther Farkas)
飲料会社経営・弁護士
1979年、ハンガリー・ブダペスト生まれ。デューク大学、ミシガン大学ロースクール卒業。大手弁護士事務所に10年間在籍。その後、自身のファーカス&ニューマン弁護士事務所を設立し、2016年に起業。

撮影=GION イラスト=永宮陽子