大好きな祖母の手作りパイを受け継ぎ、ブルックリンの大人気店に育てる
繁忙期の11月の感謝祭には3日間で5000個のパイのオーダーが入るブルックリンの人気パイメーカー「フォー&トゥエンティ・ブラックバーズ・パイ・ベーカリー」。エミリー・エルセンさんはこの店の経営者だ。最近若者に人気のゴーワヌス地区の古い建物の温もりをそのまま生かした1号店には、旬のフルーツやフレーバーを組み合わせたフレッシュなパイが並ぶ。彼女が幼少の頃から食べ親しんだ“おばあちゃんのパイ”のレシピをベースに考案された。ひと切れのパイと1杯のコーヒーを楽しみにやって来る人たちが、朝から後を絶たない。
大手アーティストエージェンシーなどで働いていたとき、友人の誕生日や記念日にいつも手作りのパイを手みやげに持っていった。これが毎回大好評。「パイは多くの人に満足してもらえるデザートだと再認識。私が作ったパイを誰かに美味しいと言ってもらえる喜びに目覚めて、これはビジネスになると思いました」
アイデアに賛同した妹のメリッサさんとともに起業を決意。一貫して芸術系の仕事に就いていた自身とは対照的に、妹は経営学専攻で数字に強く、自分にはないスキルがある“ベストパートナー”だ。しばらく故郷のサウスダコタ州に通い、祖母から秘伝のレシピとパイ作りの美学や情熱をあらためて学んだ。
起業後、パイのレシピ本出版の話が舞い込み、この本がきっかけでテレビ番組にも出演。またたく間に人気店になった。「メディアがブルックリンの起業家に注目していた時期だったので、追い風になりました」
現在は店頭販売のほかに卸売りも手がけ、大阪の老舗デパートのニューヨークフェアに連続4年間、出店している。それが縁で、黒ごまパイや、京都の一保堂茶舗の抹茶やほうじ茶を使ったパイが人気メニューに加わった。
「日本の抹茶などのように、旅先で出合った素材を使ったパイをどんどん手がけていきたい。2019年は起業して10年目。アートのスキルを生かして、若手アーティストの作品を店内で展示することも考えています」
ビジネスは常に創造的であるべき、というポリシーにブレはない。
8:00 起床。コーヒーを飲み、シャワー、朝食。
10:00 メールチェックのあと身支度。
11:00 パイを作るキッチン、ブルックリンの店舗、マンハッタンの卸先へ出かける。
19:30 仕事が終わる。気分が良いときは帰宅前にジョギングやジムに行く。
20:00 自分で料理を作って夕食。または気の置けない友人と食事。
23:00 何も予定がない日は読書か友人や家族と電話で会話。
24:00 就寝。
▼my favorite
●美容と健康→良質なタンパク質、野菜をたくさんとる。オーガニックや地元産の良質な素材にこだわっている
パイメーカー経営
1980年、サウスダコタ州生まれ。芸術大学のプラット・インスティテュートで彫刻を専攻。マンハッタンの芸術系書店、ギャラリー勤務などアート系キャリアを経て、2010年に起業。