【エレン】賞金の380万ドル、どうするの? 車は持ってる?
【なおみ】持ってません。
【エレン】車を一台買いなさいよ。自分のために何か買いたいものはないの?
【なおみ】まずは両親のために何か買ってあげたいです。
【エレン】いい答えね……家でも買う?
【なおみ】いつでもあなたの番組を見られるように、大型テレビを買ってあげたいです。

これでは、大坂なおみを嫌うほうが難しいだろう。真心をもって相手をたたえれば、嫌う人はいないのである。

▼大谷翔平
2、3回でんぐり返りをして「ア!」と叫んでほしい

たった1年で驚異の成長

18年前、私は米国の大学でスペイン語の授業を受けていた。学期終わりに5分間スピーチをすることになったが、チリ出身のオスカル・サルミエント教授は学生にこう言い渡した。

「今回のスピーチは、丸暗記してもらいます。原稿を演壇に持ち込むのは構わないが、視線を下に落とすたびに毎回1点減点します」

大谷翔平氏(AFLO=写真)

なぜこんな昔話をしているかというと、大谷翔平のスピーチでケチをつけるとしたら「下を向いている」ことくらいだからだ。しかも、渡米わずか1年でここまでできる日本人は本当に珍しい。ほとんどの日本人は、話している英語が全く通じず、日本で習った英語が役に立たないどころか有害ですらあったことに打ちのめされ、なおのこと引っ込み思案になって、まともに声も出なくなる。

相手に通じる発音で、スピーチの形式も守っており、構成も練られている。それもあくまでベースボールという仕事をしに行ってこれだけ人前で話せるようになることは、どれだけ称賛しても足りないくらいだ。

中身を分析しても、「相手をたたえる」→「感謝の言葉を述べる」がきちんと入っており、最後には「次回はこのカンペがいりませんように」と「少し自分を落とす」までできている。おそらく、専属通訳を務める水原一平氏の指導がよいのだろう。

ちなみに、日本人の英語が通じないのは「発音」の前に「発声」ができていないからだ。中津燎子著『なんで英語やるの?』に詳しいが、日本語は胸式呼吸で話せる言語で、英語は腹式呼吸で横隔膜を使うことが必要なのだ。一般人は、とにかく「大きな声を出す」ことを意識することだ。同書に紹介されている方法で、「でんぐり返りの直後に“ア!”と叫ぶ」というのがある。そうすれば必ず横隔膜から声が出るからだ。ぜひ、試合前に外野でアップをするときに2・3回でんぐり返りをして「ア!」と叫んでみてほしい。

次に、「マイ・フェア・レディ」の一場面が参考になる。ヒギンズ教授がイライザに練習させたのが、The rain in Spain stays mainly in the plainだ。ひたすらai【ei】の発音を繰り返すわけだ。これができたら、今度は飴玉を口の中に入れ、不自由な状態で同じ発音練習をする。そうすれば、飴玉がなくなったとき、さらにわかりやすい発音になる。