食いしばりの救世主は、シワ治療で人気の「ボトックス」

今までの治療法は前述のように歯を削ったり、夜間の食いしばりを軽減するマウスピースを着用するのが一般的だった。ところが今、ボトックス注射を併用する治療が増えてきているという。

ボトックス注射といえば、表情筋に打つことでシワを改善する美容医療としておなじみだが、近年は筋肉の緊張を和らげる効果を利用し、咬筋の筋力を弱めて、食いしばりを軽減する目的で活用されるようにもなっている。

「早い方だと打った次の日から調子の良さを感じるようです。多くの方は1週間ぐらいすると、アゴの疲れが軽減されたり、朝スッキリと目覚められたりと効果を実感するようになります。この頃になるとエラの張りが小さくなってくるので、小顔になるという利点もあります」

咬み合わせ治療やマウスピースと違い、長年の悩みをすぐに解決できるのも魅力だ。

今のところボトックスを導入している歯科医は多くはないものの、石田先生のクリニックでは、最初からボトックス注射を打ってほしいという患者も多く、毎日1人、多い日には3人以上も施術をすることもあるという。

「ボトックスを歯科領域で使うかどうか、以前は賛否両輪ありましたが、実際にはすごくラクになったという患者さんがとても多くて。ここまでラクになるのであれば、やはり使ったほうがいいと、今ではその効果が認められています」

気になるのは効果の持続期間。ボトックス注射の効果は3~6カ月といわれているため、繰り返し打たなくてはいけないのでは……と思いきや、1度で終わる場合もあるという。

「食いしばりの強い方は定期的に打ちますが、軽度だとマウスピースと併用することで、3~4カ月のうちに食いしばりのクセがなくなる場合も。そういう方は1度打っただけで終わることが多いですね。ただボトックスだけでは根本的な解決にはなりませんから、やはり咬み合わせ治療とマウスピースを併用するのが望ましいです。そして、もうひとつ注意したいのは打つ量。美容医療でもエラ痩せのボトックス治療がありますが、咬筋の力を弱めることを目的とした場合、量が足りないことが多いんですね。筋肉や歯のことがわかっている歯科医で打つことをおすすめします」

クリニックでは個人個人の咬みグセを見極めながら、片側ずつ打つ量を決めていく。どんなに食いしばりが強い人でも、片側3単位(30ml)を打てば足りるという。確かに美容医療と比べると本数は多めだ。また、表情筋ではなく咬筋にしっかりと打つため、注入の深度もシワ対策よりも深いのも特徴。

(写真左)before/(写真右)after(1週間後)

深く注入するとはいえ、表面麻酔をしているので、注射の痛みはなく、注入の感覚を感じる程度だそう(個人差あり)。1週間ほどすると、グッと咬みしめた際の咬筋の隆起は小さくなり、常に咬みしめていたクセがなくなる人が多いという。アゴの疲れも軽減し、いかに自分が今まで歯を食いしばっていたかを実感するよう。

美容だけではないボトックスの活用法は今後さらに注目を集めそうだ。

(写真左)I.Sデンタルクリニック 東京都港区北青山3-5-25しもじまビル4F TEL=03-5785-2953 診療時間=10:00~13:00、14:30~18:30(平日)、10:00~17:00(土曜) 休診日=水曜・日曜・祝日 ボトックス1単位(10ml)1万800円(税込み)~/(写真右)「食いしばり治療のボトックス注射は、歯科医で行うのがおすすめです」石田先生