なぜ「再生可能エネルギー」なのか
脱炭素化の動きは世界的な潮流として着実に加速しているようだ。「RE100」プロジェクトに加入する日本企業が続々と名乗りを上げている。2017年4月に参加表明したリコーを皮切りに、現在(2019年1月末時点)その数は15社に達している。
「RE100」とは、「Renewable Energy 100%」の略。イギリスに本部を置く国際環境NGO「The Climate Group」が2014年に開始したイニシアチブで、加盟企業は事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げている。ちなみに日本企業の加盟は、ソニー、富士通、丸井グループ、イオン、大和ハウス工業、アスクル、積水ハウス、芙蓉総合リース、城南信用金庫、戸田建設など、業種もさまざま。
再生可能エネルギーとは、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスによるもの。化石燃料による火力はもちろん原子力も含まれない。日本の現状を見る限り、これで全ての電力を賄うとなると企業の負担は少なくないように見える。
はたして、RE100%への動きは本物なのか、今後も目指す企業は増えるのだろうか。エネルギー業界の将来を展望した『エネルギー業界の破壊的イノベーション』の著者の一人でもある野村総合研究所の滝雄二朗氏は、「RE100に加入する企業の背景にはいくつかの事情がある」と説明する。
「まず大枠として、世界全体で地球温暖化対策に取り組むことに合意したCOP(気候変動枠組条約締約国会議)の動きは、特に世界をマーケットとする大企業にとって無視できないものです。さらに企業にとってステークホルダーとなる株主は、ESG重視の投資行動を強めています」
つまり環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)といった視点から長期的なリスクを持っていると判断された企業は敬遠されるというわけだ。
「しかもこの傾向は年金基金など巨額な資金を運用する機関投資家ほど強いので、企業としては一大事。欧州では、石炭発電に投資している会社は投資対象から外すなどといった動きすら実際に出始めているのです」
企業にとってのステークホルダーは投資家だけではない。
「顧客となる消費者も、環境への負荷ができるだけ少ないエネルギーを選別志向するようになっています。従業員の採用に際し、いかに優秀な人材を惹き付けるかにおいても、エネルギーを含めた社会的責任を負って運営している企業でなければなりません」
BtoC企業にとっては、顧客へのPR効果が見逃せないわけだ。
「ハウスメーカー、小売事業者、飲食事業者、金融事業者などは、消費者に対するイメージアップ効果に期待している部分も少なくないはずです」