削る技術を磨いて要素を絞り込む
文章は、シーンによって求められる量が変わる。ビジネスでは、上司にA4 1枚で報告する場合もあれば、会議で詳細を検討するために分厚い資料の作成を迫られる場合もある。また、小説やエッセー、懸賞論文などの応募も、賞によって規定の枚数は違う。必要に応じて枚数を書き分けるためには、どのような点に気をつければいいのか。
「書けない、伝わらない…『7つの悩み』克服法」で処方箋を出してくれた藤原智美氏と齋藤孝氏に、変幻自在に枚数を書くコツを伝授してもらおう。
一般的には、枚数が多いほど書くことを負担に感じる人が多いだろう。しかし、少ない枚数を侮ってはいけない。藤原氏は「原稿用紙10枚より、1枚のほうがずっとハードルが高い」という。
「第28代米大統領ウィルソンは、『1時間の演説ならいますぐ始められるが、10分のスピーチは準備に1週間かかる』と言いました。文章も似たところがあります。原稿用紙10枚あれば、何でも好きなことを書けます。しかし、枚数が少なくなるほど要素を省かなければならず、苦渋の決断を迫られることになります」
スラスラと文章を書けるプロならではの意見に思えるが、アマチュアでも、ブロガーならこの指摘に共感するかもしれない。ブログは文字数の制限がなく、思うままに文章を綴れる。それに慣れてしまうと、いざ枚数を制限されたとき、文章をまとめるのに苦労する。
このように、長い文章は得意だが短い文章は苦手というタイプは、どうすれば短い文章がうまくなるのか。
「普段から文字数の制限なく書いている人は、文章を削る技術を磨くと、少ない枚数にも対応しやすくなるはず。文章を削る方法は、2通りあります。一つは文章を推敲し、過剰な装飾を取るなどして文字を詰めていくやり方。この作業を毎回繰り返せば、表現力も高まります。もう一つは、要素をバッサリ切り落として、全体を構成し直すやり方です。枚数の制限があるときに役立つのは、むしろ後者の方法。そもそも要素が盛り込まれすぎの文章は、焦点がぼやけて読みにくいもの。枚数にかかわらず、要素を絞り込む習慣をつけるべきです」(藤原氏)