60~70人の部下を育休に送り出してきました
日本生命といえば、男性育休取得率100%で有名だ。それもすでに17年度で5年連続達成。育休は基本的に1週間程度だが、現場で人が抜けてしまうことは大きな打撃。年を重ねるごとに、それを現場の好機として活用するようになってきた。
「もう60~70人の部下を育休に送り出してきました。それは、私自身も大きく変える経験になりました」と話すのは、名古屋支社理事支社長の三木勝也さん。
「例えば営業部には30~40人程度の職員がおり、その営業部長が育休を取るとやはり業務に支障が出ます。そこで、その期間、周辺の営業部長に交代で来てもらい、朝礼や業務を担ってもらうことで、職員にも『いつもとは違った視点や刺激をもらえる』と好評です」
名古屋支社に配属されたその日に第1子が生まれたという神谷健吾さんも、18年に子どもが10カ月になった頃に育児休暇を取得した。
「育休を取ったことで、妻への日頃の感謝はもちろんのこと、一緒に働く子どものいる職員が帰るのを見て、『早く帰れていいな』と思っていたのが『ここからが大変なんだろうな』と応援するような気持ちで見送るようになりました」と話す。
「育休のおかげで、支社あげての前倒し運営や、業務シェアが広がってきました。私が若いときは深夜や土日まで必死で働くことが美しいと思っていましたし、娘たちが小さい頃はほとんど起きている時間に帰れませんでした。共働きが当たり前だったなら、私も家事分担や子どもとの時間をもっと楽しめたかも。今の若い人たちには、同じ思いをさせてはいけない」(三木さん)
日本生命では、転勤を伴う職種と地域限定型の職種があるが、三木さんや神谷さんは転勤を伴う営業総合職。「何も言わずについてこい」の時代は終わり、育児ができなければ、家族にはついてきてもらえないと不安を口にする。
「営業部長も、昔の根性論の時代の人々から、子どもがいる人やゆとり世代といわれる人々に変わっています。そういう人たちに『営業は嫌だ』と言われたらわが社はもたないんです。働き方への価値観が変わった今だからこそ、上は業務負荷を調整したり、仕事が終わったらパッと切り替えられるような風土づくりが大事です」