父に母を殺されたエリザベスは、一時的に私生児の身分に落とされます。異母姉に疎まれてロンドン塔に幽閉されるなど、かなり辛酸をなめました。しかし、忍耐と勤勉、知恵と人望で女王の座を得て、45年間玉座に君臨し、イギリス絶対王政を確立。「国家と結婚した」と宣言し“処女王”となります。しかし実際には恋人との間に子どもをつくれず、母アン・ブーリンの悲劇が彼女のトラウマになっていたのかも。
50歳を過ぎると「あなたは美しい」と言われることに執着しだします。お愛想でも美しいと言われることで、自分自身も美しいと勘違い。政治的判断力に長けた女性なのに、自分の容貌を客観視できていないところも、人間くさくて面白いのです。30歳以上も年下の美男の貴族と恋仲になるけれど、彼が「女王は骸骨みたいだ」と口をすべらせたことで女王は激怒し、処刑台へ送ります。
エリザベス1世
イギリス●1533~1603
目鼻立ちは整ってはいるが“白塗り”が悪目立ち。肖像画の顔は老年になっても老いることなく、どんどん若返らせていく。リアルさよりも政治的プロパガンダとしてのイコン(聖像画)を要求したのだ。
【光】王の正統な血を受け継いだのに、望まれぬ娘として生まれて以来苦労の連続。その経験を生かして人間観察力も磨いた。
【影】結婚をあきらめたのち、臣下や女官の結婚に露骨に嫌悪感を示すようになり、何度も妨害するなどの愚行に出る。