一方、ほとんど同時代に生きたイギリスのヴィクトリア女王はエリザベートより年齢は18歳上ですが、ずっと長寿。背が低く美人ではないけれど、若いころはぽっちゃりとかわいらしい人だったことが肖像画からもわかります。
19世紀、イギリスの黄金期を築いた彼女が幸運だったのは周囲に有能な側近がそろい、世界中の植民地から搾取した富でどんどん国が繁栄していったこと。学究肌で穏やかな夫が亡くなった後は、鬱(うつ)状態で数年引きこもりになりますが、馬番と恋愛をして、女性としての自信を取り戻します。この馬番との出会いも側近たちの手引きによるものとされます。国民にとっては由々しきスキャンダルですが、国が豊かで潤っていたため、恋愛ぐらいは大目に見てくれたよう。恋人の死後、女王は彼の弟にあてた手紙に「『私ほどあなたを愛した人はいませんよ』といつも彼に言ったものです」と書いた。愛に生きた女王であることが伝わります。
ヴィクトリア女王
イギリス●1819~1901
豪華なローブ姿の若き日のヴィクトリア女王。150cm足らずの小さな体で、すでに肥満の傾向が出ている。元来の生真面目な性格からか、表情もやや硬い。でも大きな青い目が魅力的だ。
【光】夫を愛し、恋人を愛し、純粋で情熱的なかわいい女性。仕事にもエネルギッシュに取り組む。
【影】「君臨すれども統治せず」の表の顔とは裏腹に政治に口をはさむ。多くの子どもとも不仲だった。