自分のコストと価値を自覚していますか?

北村信貴子●アタックス取締役執行役員

企業の存続に、何が一番大切でしょうか。それは長期安定利益を確保することです。つまり「黒字」を出し続けるということです。いくら理想を掲げても「赤字」では企業を存続させることはできません。雇用も守れませんし、未来に向けた投資もできません。また、赤字企業ばかりでは税収が激減し、国の財政を圧迫します。少しキツイ言い方ですが、「赤字」は悪なのです。

企業の活動はすべて数字に置き換わります。企業に所属して働く人間であるならば、「自分たちの活動のすべてが会社の業績を左右している」、そういう意識を持ちたいですね。

自分にどれだけのコストがかかっているのか。それに対し、自分はどれだけの価値を提供しているのか。そして会社の最終利益を黒字にするために自分はどう活動しなければいけないのか。数字はその活動の良しあしを測るものであり、会社の存続を左右するもの。そう考えると数字の勉強がグッと身近なものに感じられると思います。

全社員が経営に参加する“アメーバ経営”という仕組み

初級、中級で身につけてほしいのは数字から企業の健康状態を診断する力です。そして会計は、健全な経営を実現するためにあるということを肝に銘じてほしいと思います。初級で紹介している『稲盛和夫の実学経営と会計』はぜひ読んでいただきたいですね。

稲盛和夫さんが京セラを創業したのは1959年のこと。京セラは創業以来1度も赤字を出したことがありません。稲盛さんといえば、全社員が経営に参加する“アメーバ経営”という仕組みを生み出した方です。この本には赤字を出さない会計の仕組みが詰まっています。

『儲かる会社と儲からない会社の違い』も、ちょっと視点が変わっていて面白い本です。右肩上がりではなく、右肩下がりの経済下では、すべてを逆算して考える「逆算経営」の思考が有効であると。「売り上げ-費用=利益」ではなく、売り上げから必要な利益を引いて残った費用で賄うという発想の転換もビジネスに生かせるのではないでしょうか。

そして上級にあげた3冊は、より高いレベルの経営活動を実現するために役立つ専門書です。『KPIで必ず成果を出す目標達成の技術』では、結果に結び付くKPI(重要業績評価指標)の活用方法が学べます。数字を学ぶことは、よりよい未来を創ることにつながっています。自分自身の働き方を改革するうえでも、きっと役に立つはずです。