石川県羽咋市の中小企業、平鍛造を経営していた“おばちゃん社長”平美都江さん。腕は確かだが数字には無頓着な鍛造職人だった父が創業した会社を引き継いだのは、廃業した後だったといいます。金融機関から「貸す金は1円もない」「価値ゼロ」と突き放されてから無借金経営に至るまでの道のりとは――。

※本稿は、平美都江『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか 父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

財務の大原則「会社は、利益を出すためにある」

財務を考えるに当たって、根本的な原則は、会社は、利益を出すためにある! と考えて、今まで私は経営してきました。

平鍛造の平美都江社長
撮影=奥川純一
平鍛造の平美都江前社長

もしも今赤字ならば、とにかくそこから脱却することが優先順位一位の課題になるわけです。

うちの会社も、私が裁判の末に父から会社を引き継いだ当時は、そのままなら閉鎖しても仕方ない状況でしたから、身にしみてわかります。

父の経営は一時期うまくいって無借金経営まで達成したのに、裁判の結果父と私が和解し、父の持分株式の買取金および退職金60億円を支払わなければならなくなる。父の強気な商売のせいですっかりお客さまには嫌われて、注文ゼロ状態が続いてしまうわで、大ピンチでした。

赤字から抜け出す原因を発見する

どうにかして赤字体質から脱出しなければ会社はつぶれてしまう。では、利益を出すためには何をすればいいのか? 客観的に考えればわかる。でも、

「売り上げ(収入)≳コスト(支出)」

という、このすごく簡単なセオリーは、主観的になればわからないものです。

さすがにそのくらいわざわざ言われなくてもわかるわ! と怒られそうです。

この式を成り立たせ、売り上げをコストよりも大きくするには、次の二つの方法があります。これもまた、非常にシンプル。

①売り上げを増やす
②コストを減らす

可能であれば、その両方。でも、昨今の状況から考えても、どちらか先に手がけるなら、まずは自分たちの努力だけでできる②のコスト削減でしょう。

私は、万年②のコスト削減を不断なくやっています。