現実世界の出来事とひもづけて理解する

入社して最初に配属されたのは、保険料などの資産を運用する資金債券部。そこから、売買データなどのビジネス数字と向き合う日々が始まりました。と言っても、担当していたのは売買戦略ではなく、債券単価や利益などの数字を1円単位まで正確に計算する事務作業でした。ひたすら無味乾燥な数字の羅列を追いかける毎日で、正直言って私にとっては苦痛でしたね(笑)。

日本生命保険相互会社 執行役員 リスク管理統括部 部長 大澤晶子さん
日本生命保険相互会社 執行役員 リスク管理統括部 部長 大澤晶子さん

でも、そうした仕事を通して金利の仕組みに興味を持ち始め、先輩に教えてもらううち、目の前の数字の背景が少しずつわかるようになっていきました。暗号のように見える数字も、実は社会の動きの表れなのだと気づき、意味や面白みを感じるようになっていったのです。その後に証券の勉強を始めたのも、社内の留学制度に応募してアメリカで学んだのも、このとき「数字って面白い」と体感できたおかげだと思います。

私は理系出身ですが、もともとリアル感がないものには興味を持てないみたいなんです。学生時代も、波動や虚数といった目に見えないものより、虫や花などの生物観察のほうが好きでした。数字も目に見えないのでリアル感がなさそうに思えるかもしれませんが、ビジネス数字は現実社会での動きを反映したもの。裏には必ず人や社会の活動があり、私はそこに人間味や手ざわり感を覚えます。ですから、数字を見るとまず「これはどんな活動の結果なんだろう」と考えるのが習慣になっています。私にとって数字は、リアルな出来事とひもづけたほうが理解しやすいんですね。