65歳を超えたOB2名が寮長として交代で勤務

私自身もかつて大規模な社員寮に住んでいたことがある。当時は大らかな時代で、不便に感じる部分も多かった。部屋にはキッチンやシャワーがなく、冷蔵庫は食堂に巨大なものがひとつ置かれていて、常に満杯。大浴場は午後10時以降お湯が出なくなって、冬に利用するのはつらかった。そしてよくも悪くも寮生の関係が密接だったため、個人の空間があまりなく、自分の時間を自由に過ごすことが難しかったという記憶がある。

寮のコンセプトは昔のままだが、日吉寮は時代に合わせて、プライバシーを尊重し、施設を充実させた。居室にはシャワーブース、ミニキッチン、ミニ冷蔵庫があり、自分の空間を満喫できる。シェアキッチンや、サウナ付きの大浴場もある。

社員寮について、「家に帰っても会社の人間がいるなんて、自由がない。ずっと管理されている空間ではないか」という声もある。しかし、1人でいたいときは部屋で過ごし、誰かと話したいときは共有スペースに出る、という選択肢があり、生活スタイルは自分で選ぶことができるのだ。

寮はネットワークの構築だけではなく、人材育成の効果も期待している。住み込みの管理員とは別に、65歳を超えたOB2名が寮長として交代で勤務。挨拶・掃除のようなマナーを教えたり、元気がないようであれば声がけをして相談に乗ったり、寮生を見守る役割を担っている。

そして「健康経営」を掲げている弊社は、寮を若手社員が健康習慣を身につける場としても考えている。具体的な健康習慣は、おもに3つあり、1つ目が運動だ。社会人になると忙しくなって、運動する機会が減っていく。そこで寮と駅の間にあるスポーツジムと提携し、月3回の利用まで会社が費用を負担する。

2つ目は禁煙。寮は1カ所だけある喫煙所以外、全館禁煙だ。そして希望者には、6カ月間のサポートで禁煙達成を目指すアプリを使って、禁煙プログラムを実施する。現在、12名が実験的にトライアルしており、もし効果があれば全社でも導入する予定だ。

3つ目は食生活。昔の独身寮は事前に1週間の食事の予定を申告する必要があり、使い勝手が悪かった。日吉寮は事前予約不要で、管理栄養士が多彩なメニューを提供。約400円の夕食はインスタグラムでメニューが確認でき、夜は21時30分まで利用できる。

若者は健康についてあまり意識していないものだ。それが年を重ねるにつれて、だんだん不健康になっていく。それを予防するため、早いうちから、住んでいると自然と健康習慣が身につく環境をつくっておきたい。長い目で見れば健康な社員が増え、結果的にはそれが会社の利益につながる。