「ちゃんと、『あの熊本のゆるキャラを描か……ない』と断り書きもあるけど……」
「それで許せば、すべてオーケーになりますよ」
「しかし、『少年ジャンプ』だよ。そのジャンプがここまで大きく、くまモンを話題にしてくれるとは、なんともありがたいというか……くまモンも成長したねぇ……」
「感心している場合ですか? 少年向けコミック誌としては、最大の267万部と、二番手の倍以上の発行部数を誇るジャンプですよ。その影響力を考えてください」
「部数まで覚えているの?」
「愛読者なもので」
「で、どうしろ、と?」
「ほっとくわけにはいかんですよねぇ……ちゃんと抗議しますか?」
「そうです。集英社の『少年ジャンプ』編集部に乗り込みましょう!」
「つまり……」

テーブル越しに課長を見あげる職員の眼光が鋭くなります。

「つまり、『少年ジャンプ』編集部には、くまモンを抗議に行かせるんだな?」
「はい。正面から抗議したら、お互い気まずくなるだけです。抗議には行くけれど、くまモンが抗議に行く。これが熊本県からのメッセージです。あとはジャンプ編集部がどう出るか。ガチになるか、出来レースになるか……」
「もちろん、言い出しっぺがついていくんだよね。くまモンと一緒に……」

くまモンがツイートして出方をうかがう

今度は、その職員を見る課長の目が光ります。

「ええ、くまモンは話しませんから」
「と、なれば、あとは早いほうがいい。ゴールデンウィークに入れば、編集部も休みになるだろう。見れば他のキャラも描かれているし、万が一にも先に動かれたらまずい」

「ツイッターはどうしましょうか? くまモンにツイートしてもらって、先方の出方を見るのも、よろしいかと……」と、別の職員。

「面白くなってきたぞ。早速、くまモンにもこのジャンプを渡して動いてもらって」

ゴールデンウィーク明けの5月9日、くまモンがジャンプを手に、ツイートします。

「おろ? 『週刊少年ジャンプ』に何か載ってるモン」
「なぬ? ゆるキャラ伝説くまモンじゃないヤツ物語……とりあえずワンピース先に読むモン。おやくまー☆」

さらに、5月11日。

「さて、ワンピースもソーマも磯兵衛も読んだし、例のくまモンじゃないヤツ物語をチェッくまするモン……ばっ! くまもと出身のうすた先生が作者かモン!……ばっ!!! これはいったいどういう事かモン!!? もっとくましく読んでみるモン! おやくまっ☆」

と、引っ張って、5月12日。

「ボクの知らないところでジャンプに掲載するなんてショッくまだモン!!……もしもし! 集英社さんかモン!?……ばっ、通話中で繋がらないモン! こうなったら今度直接、集英社に行ってみるモーーーーーーーン!!」