冬場の気候は農作物の育成にも影響した。その結果、野菜など生鮮食品の価格が高騰した。それが、消費の手控えにつながった。年明け以降、食品スーパーに行くと、「野菜が高すぎる」との声をよく耳にした。野菜の値段が高くなった分、外食などを減らし家計全体の支出が増えないようにする心理は強まりやすかった。
気候が温暖になるにつれ、冬場の天候不順による影響は薄らぐ。それに伴い、個人消費は従来の水準に回復する可能性がある。今のところ企業業績も好調だ。昨年までと状況が大きく変わったとは言いづらい。それが、景気の落ち込みが一時的であり、GDP成長率が従来の水準に戻るとの見方を支えている。
懸念される設備投資=イノベーションの源泉の減少
マイナス成長のもう一つの要因は、企業部門の設備投資の減少だ。設備投資の動向を考えると、景気の落ち込みが一時的か、根本的な景気変調のサインか議論が分かれる。ポイントは、企業部門の新しいもの作りの動き=イノベーションの動向だ。
イノベーションは、従来にはない発想を実現し、新しいモノやサービス、生産プロセス、販路、組織を実現することだ。ヒット商品を生み出すこと、そのものがイノベーションなのである。それが企業の設備投資の増加、業績拡大につながる。潜在成長率=経済の実力が高まるためには、イノベーションが必要だ。
近年の世界経済を振り返ると、米国を中心とするIT先端企業のイノベーションが、人々が「欲しい」と思うモノやサービスを創造してきた。典型例は、米国のアップルだ。iPhoneは携帯電話の常識を覆し、スマートフォンという新しいプロダクトへの需要を創造した。アマゾン、ネットフリックス、グーグル、フェイスブックも、ネットワークテクノロジーを駆使して新しいサービスやモノを生み出し、成長を遂げている。
日本経済の回復は米中経済の動きを取り込んだから
中国は公共投資で景気を支えつつ、ネットワークテクノロジーの普及を進めた。それが、アリババ、テンセント、バイドゥ(BAT)の成長を支えた。また、中国政府はIoT(モノのインターネット化)を重視し、省人化投資などが増加した。
こうした米中経済の動きが、半導体、その製造装置への需要を増加させた。それを取り込んで、わが国の設備投資が増加した。これは、わが国の景気回復が海外経済に依存していると言われる顕著な理由だ。