なぜリクルートはLGBTに関心が高いのか
イベントはほぼ毎月行われ、子育て、介護、働き方などテーマは多岐にわたる。「LGBT」を取りあげた回は反響も大きかった。「LGBT」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称。初回はゲストを招いて話を聞いたが、2回目以降は社内の当事者も登壇するようになった。参加者は一緒に話すことでより理解が深まり、当事者たちのネットワークもできた。
社内での関心が高まるなか、17年4月にはグループ9社で人事制度が改正され、同性パートナーも配偶者としての福利厚生を適用することを決定した。その当日、社員から届いたメールが伊藤さんには忘れられないという。
「当事者の方からのメールで、『入社したときの私に、今日という日のことを教えてあげたい』と。本当にリクルートに入って良かったと書かれていて、とても心に響きました」
そもそもリクルートの企業文化の1つに、「圧倒的な当事者意識」があげられる。社員自らが当事者意識をもって、日々の生活で感じる「不便」「不満」「不安」を見出す。それがビジネスチャンスとして活かされ、新規事業の立ち上げにつながってきた。大学生向けの就職情報誌に始まり、総合結婚情報誌の「ゼクシィ」、中古車情報誌「カーセンサー」、クーポンマガジン「ホットペッパー」等を展開。小中高生向けのオンライン学習サービス「スタディサプリ」も受験生の悩みを解消するために生まれた。
また多様化するライフイベントに合わせて、サービスも進化している。「ゼクシィ」編集部では、かなり早い段階からLGBTの人たちのニーズに着目し、読者の事例のなかでも同性カップルが結婚式をするケースを紹介してきた。それによってブライダル業界全体の意識が変わり、ウエディングドレスを2人で着たいと望むカップルの希望に対応するような会社が出てきた。
さらにマンションや一戸建てなど不動産情報を提供する「SUUMO」では、17年から家を探すときの条件の1つとして、同性カップルでも入居しやすいことを示す「LGBTフレンドリー」という項目を賃貸物件に追加。スーモカウンターでは「LGBT新築マンション購入相談」も開始した。