社内に「イクメン・イクボス・イクジイ」養成セミナー
モチベーション向上の施策には、管理職や女性自身の意識を変えるための「ダイバーシティフォーラム」、結婚、妊娠、出産した女性MRや女性営業職に育児の情報を共有する場を提供する「Otsuka Women’s Workshop」、女性管理職が始めた「自主的リーダー勉強会(WING)」、「イクメン、イクボス、イクジイセミナー」などがある。
なかでもWINGはボトムアップで始まったユニークな勉強会だ。事業や経営について学ぶほか、アンガーマネジメント、マインドフルネスなど時流に乗ったテーマも多い。今は管理職でなくても参加でき、男性も含めて40人弱のメンバーがいる。
「自分たちもかかわれるダイバーシティ。会社への提案も可能です」
男性社員が育児休暇を申請し、上司が対応に困るというケースを自分たちでシナリオにして映像化するといった面白い試みもあった。また最近は、年齢やホルモン変化による気分や体調の波を知り、それに向き合いながら仕事を続けていくノウハウを伝える「働く女性のための健康セミナー」にも力を入れる。
「昇格のチャンスで、体調が悪いからと断るのはもったいない」
セミナーでは、40歳以降の女性の“ゆらぎ期”をサポートするサプリメント「エクエル」の開発途上で得たノウハウが役立っているようだ。同社は執行役員こそ女性比率が15.2%と高いが、管理職比率では8.9%と特別な数字ではない。
「順当に評価した結果と受け止めています。全体の女性社員の比率が22.4%(数字は16年12月現在)で勤続年数も男性より短く、数値を持つと女性の底上げをしたくなるのであまり気にしません」
一方で、渡辺さんのように女性管理職を嘱望する声もある。
「当社では、ゴールは同じでもそこに至るやり方は比較的自由。女性の管理職が増えれば、やり方にバリエーションが出てドラスチックに会社が変わっていくと考えています」
女性が働きやすいよう制度・環境はかなり整っている。モチベーションを鼓舞する施策も継続している、あとは長く働く女性が増えれば自然と女性の管理職は増加するだろう。17年は事業所内保育所にも手を付けた。「ビーンスターク保育園とくしま」の増築だ。子どもたちに提供するプログラムや食事に大塚製薬らしさが見て取れる保育園。これまで定員は150人で、大塚グループ企業の社員の子どもを受け入れてきたが、今後も園児が増える見込みで72平方メートル増床し、定員も210人と、日本最大級の規模になる。
「働くママだけでなく、パパも安心して働ける保育園です」(田中さん)
一歩先を行くことで成長を続けてきた大塚製薬。ダイバーシティも他社に先駆けて進めてきた。そんな同社が力を入れる健康経営は、すべての社員が長く健康的に働くことを念頭に置いている。これは、日本の大きな流れの「一歩先」にいるのかもしれない。
徳島市にある同社の事業所内保育所「ビーンスターク保育園とくしま」。2018年度からは定員が現在の4割増の210人となり、事業所内保育所の規模としては日本最大級となる。
撮影=米田真也、市来朋久、伊藤菜々子