新しい映像手法ではないのではないか?

だが、現地で映像手法を体験した私には、ふと疑問がよぎった。

「こうした映像は、本当に新しいのか。5Gである意味はどこにあるのか?」

私が期待していたのは、モバイル端末で、リアルタイムに、しかもUHD(4K・8K)の映像を見ることができるという点だった。ところが多くのデモは、録画映像でリアルタイムではない。結局、リアルタイム映像はテレビで見ることが前提になっていた。

観客の一人ひとりの手元から、まったく新しい映像を、リアルタイムで体験することはできなかったのだ。その理由は、5G端末そのものが十分に用意されていなかったことと、試合を撮影し、配信するためのコントロール体制ができていなかったためだろう。まだ「実証実験サービス」だから、その点は仕方がないともいえる。

ドローン編隊への5Gの利用をインテルは否定

ピョンチャン五輪では印象的なパフォーマンスもあった。たとえば開会式には半導体大手のインテルが1218台同時のドローン飛行を行った。これまでの最大数は500台で、一気に2倍以上のドローン編隊を実現したのだ。韓国の三大紙のひとつ「東亜日報」は、これが5Gによるものとして、<インテル側は、「KTの5Gネットワークのおかげで、1000機以上のドローンをリアルタイムで制御することができた」と明らかにした>(東亜日報「5Gモバイル、VR、IoT、1200機のドローンショー…平昌五輪を支える先進のICT技術」2018年2月12日)と報じている。

開会式でのドローン編隊の飛行の様子(写真提供=インテル)

ところが当日は通信不良のためにドローン編隊は飛び立てず、世界に報じられた開会式の映像はリハーサル映像を合成したものだった。しかも筆者がインテルに問い合わせたところ「平昌冬季オリンピック大会開会式で公開されたギネス記録のインテル ドローン ライトショーにつきましては、ドローンの運用に5Gは使用しておらず、KTの関与はございません」との回答があった。東亜日報の報道は事実誤認に基づくものだといえる。

最初期のiPadのような厚みがあった5G端末

KT PRマネジャー ダソン・カンさん

今回、KTはサムスン電子と共同開発した5G専用タブレットを1100台用意し、パビリオンでデモを実施していた。だが5G端末は、最初期のiPadのような厚みがあり、ずしりと重かった。実際、どれほどの観客に利用されたかどうかは不明だ。中途半端な印象が拭えないが、KTのPRマネジャー・ダソン・カン氏は「これらは、実証実験であり、今後どういう可能性があるかを見てもらうためです」という。

またKTのCSR担当のジンホン・キム氏は「新しい技術が生まれても、それを何に使えばいいか、すぐにはわからない。3Gから4Gに変わったときにも同じような疑問がでました。だから創造力を働かせて考えることが大事なんですよ」と話していた。

KTと共同開発のサムスンの5Gタブレット。デモ機だからか、かなり厚みがある。画面はオムニビューの一部。