緊張予防は「あくび」「トゥルルルル」「レロレロ」
3つ目は、言うことを忘れたときの立て直し方です。このようなときは原稿を見てもOKです。ただし、机の上にさりげなく置いて、チラチラ見るのはNG。目線が泳ぐことで自信がなさそうに見えますので、見るなら堂々と見ましょう。配布資料があるときは、同じ資料に自分のカンペを書きこむこともできます。「お配りしているお手元の資料ですが」と言いながら、聞いている人たちと一緒に資料を見つつ、カンペも堂々と読むことができます。
原稿は見てもよいのですが、必ず顔を上げなければならない部分があります。それは、“結論”と“感情”を語るところです。データや分析を読み上げるときは、聞いている人も資料を見ているため顔を上げなくても問題ありません。しかし「これを提案します」といった最初の結論では、しっかりと顔を上げましょう。またデータを見ながら「これでいけるのではないかと考えられます」「ぜひ私たちにこのプロジェクトをやらせてください」といった“気持ち”や“感情”が入るところでも、目線を上げる。原稿を見ていたのでは心から思っているように見えないからです。原稿を用意するときは、顔や目線を上げるところは、マーカーで色をつけるなどして目印をつけておくとよいでしょう。
最後にお伝えしたいのは、緊張してモゴモゴと言ってしまう人の予防テクニックです。このような傾向がある方は人前で話す前にぜひ準備運動をしましょう。
しゃべるときに使うのは上あご、下あご、舌といった口全体。まずは大きく口を開けてあくびをする。しゃべるときは、それほど大きく口を開けていないものです。準備運動で屈伸をするような感じで1回、口を大きく開けておきましょう。そして「トゥルルルル」と巻き舌をする。さらに、舌を「レロレロ」と出したり引っ込めたりを繰り返す。
「あくび」「トゥルルルル」「レロレロ」、この3点セットで準備運動をしておけば、緊張してもモゴモゴするということがなくなります。
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、博士号を取得。国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。
構成=池田純子 イラスト=米山夏子 写真=iStock.com