対策その1「体をたたいて気合を入れる関取のように……」

緊張の立て直し方を3つ、お伝えしましょう。緊張すると頭が真っ白になり、何を言っているのか自分でわからなくなります。緊張していることに集中するため、より緊張が増幅してしまう状態です。ですから、緊張とは違うところに集中すればいいのです。そのとき集中しやすいのは“痛み”の感覚です。取組前に顔や体をたたき気合を入れる関取がいますよね。そんなふうに私たちも緊張を感じたら自分に痛みを与えるとわれにかえります。私も今でも講演中に聞いてくださっている方々から思ったような反応が出なくて緊張を感じたときは、冷や汗をかきながら、ももや腕を必死につねって痛みを与えています。講演が終わったときは腕にあざができていることもありますよ(笑)。

表立ってつねったりできないときは、手を力いっぱいグーにしてから開いたりしてもよいでしょう。女性の場合はハンカチを手にしていても自然です。緊張で手に汗をかくという方にはおススメの方法です。会議のときは資料をトントンとそろえながら、ギュッと力を入れるのもよいでしょう。緊張している自分に意識を向けないように一瞬、体に力を入れて、そこに集中すれば、緊張は忘れられます。自分なりの自然な動作をさがしてみてください。

緊張という感覚に力みという刺激を上書きすると、緊張していないゼロの状態に戻すことができます。そしてゼロをさらにプラスにする対処法はズバリ“タイトルに戻る”ことです。

プレゼンや会議で話す場合には、「新商品の提案」や「来年度の企画案」など、その日に話すテーマが必ずあるはずです。頭が真っ白になったら、そのテーマを言ってください。「何を言っているかわからなくなってしまいましたが、要するに私が言いたいのは、新商品として○○を提案したいというお話なんです。もう1度、こちらをご覧ください」と立て直せばいいのです。自分の緊張や混乱も告白することで共感や応援も得られます。

この方法のオトクなところは、自分は緊張しただけですが、お題を繰り返したことで「まとまっていて、わかりやすいプレゼンだった」という印象を与えること。タイトルを再度言うのは、聞いている人にとっても、おさらいになるのです。これが立て直し方の2つ目です。