大事なプレゼンで声が震え心臓ドキドキ、頭が真っ白となったらどうすればいいのか。元NHKキャスターでスピーチコンサルタントの長崎大学准教授・矢野香さんにイザというときに役立つ緊張立て直しの技と緊張予防の方法を聞いた――。

プロは緊張しても、いい案配で平静を保つことができる

いざ人前で話すことになったとき、よくご相談いただくお悩みが「緊張してしまう」ということ。緊張して声がふるえてしまう、心臓がドキドキする、頭が真っ白になる……など嫌な感覚ですよね。「緊張さえしなかったら、人前で話すのも苦じゃないのに……」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし前提としてお伝えしたいのが、「緊張するのは悪いことじゃない」ということです。私がアナウンスの仕事をしていたときに言われたことは、「緊張しなくなったら、辞めなさい」というせりふです。プロとして毎日、毎日人前で話すわけですから、話すことには慣れてきます。しかし慣れてきた頃が要注意。気が緩んでいますから、いつもなら読みまちがえないような原稿を読みまちがえたり、言いよどんだりしてしまいます。全く緊張感がない人が伝えるニュースは緊迫感も出ません。ですから、適度な緊張は必要で、緊張してもいいのです。

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緊張というのは、その舞台をいかに大切に思っているかというリスペクトの度合いともいえます。適当でいいや、と思っていれば緊張もしない。ですから、緊張したら、この舞台を大事に思っている証拠だな、と思えばいいのです。さらに、なぜ緊張しているかというと「うまくできるかな」「下手と思われないかな」と自分に考えがいっているからです。このように自分のことを考えるのではなく、「相手にわかりやすく話したい」と、軸が自分から相手に向いたら緊張しなくなります。もし緊張したら「いけない、いけない、自分のことだけを考えていた」と軸を相手に持っていきましょう。

「緊張するのはいいこと」といっても緊張したままでは上手く話すことができません。1度緊張してしまうとどんどん悪いほうにいくのが慣れていない人。プロは緊張しても、いい案配で平静を保つことができます。緊張しても立て直せるのがプロなのです。