『世は〆切』は山本夏彦の名エッセイ。締め切りに追い立てられるから、作家は名作を生み出せる。これは人類一般の法則なのだ。

人類は怠け者だから世界中に広まった?

人類はまだ見ぬ新たな土地、新たな獲物を求めて、アフリカ大陸から全世界へ移動拡散したといわれているが、最近どうもこれは違うのではないか、という気がしている。

鹿島 茂(かしま・しげる)
1949年、横浜市生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専門は19世紀フランス文学。『馬車が買いたい!』をはじめ著書は100冊以上。

現代の移動する民、ロマ族(ジプシー)の研究書によると、彼らは仲間うちや地元住民との間で小競り合いが起こると、面倒ごとを避けて、さっさと移動してしまうという。争いを仲裁する上部政治組織がないことが主な原因らしい。そこで思うのは、人類が世界の5大陸を制覇することができたのも、果敢なフロンティアスピリットのゆえというより、「なんだか面倒だからよそへ行こうか」という安易に流れやすい性質のせいではないかということだ。