さらに就労後も職場の理解がないと、情報を回してもらえない、挨拶しても無視されるといった嫌がらせをされるケースもある。ことに飲み会の席では、「もとは男だろう」と男性から気安く体を触られたり、「おまえはホモか?」などとハラスメントを受けやすい。

「セクシュアリティはアイデンティティに関わり、隠していると自己開示できないことが多いのです。『彼氏(彼女)いるの?』『結婚しないの?』と聞かれても答えられない。同性パートナーが入院したり、その親を介護する場合も、家族として休職を認められないと退職せざるをえない。LGBTの課題は女性の課題と本質的に似ているのです」(特定非営利 活動法人ReBit 代表理事 藥師実芳さん)

企業向けにLGBT研修を提供するLetibeeのLGBT研修の様子。

確かに職場のセクハラ問題にも通じ、企業のダイバーシティでも、女性の活躍推進を進めるなかでLGBT支援が着目されてきた。そうした企業向けにLGBT研修を提供する「Leti bee」代表取締役の榎本悠里香さんはこう語る。

「研修のテーマは、知識だけではなく意識を変えること。LGBTとは何かを知ったうえで、実際に身近で生じる疑問や誤解を一問一答で説明していきます。例えば、よく聞かれるのは『ゲイとホモは何が違うの?』という質問。またレズビアンの方に多いのは、男性から『もったいないね』と言われることです。そんなにきれいなら良い男性と結婚できるのに……と褒めたつもりでも、相手を不快にさせる言葉がある。自分では無意識に言ったことが人を傷つけていたかもしれないと気づくことで、当事者への意識も変わっていくのです」

Letibee 代表取締役 榎本悠里香さん

では私たちは何ができるのだろう。

LGBTを理解し、支援する人を「アライ」という。私たちも「アライ」になるには何を心がければいいのだろう。

「LGBTの人を応援したいと思う気持ちを示すことが大切」と藥師さん。差別的な言葉を使わない、相談を受けたら「話してくれてありがとう」と伝え、何に困っているのかを聞く。さらに榎本さんは「LGBTのニュースに関心を持ち、発信する」ことを勧める。社員がカミングアウトしたいと思ったとき、いつでも受け入れられる職場づくりが大切だ。今日からできることを始めよう!