いま活躍している女性管理職たちも、着任当初は不安も失敗もあったはず。ここでは彼女たちが着任した当初の100日間を振り返ってもらい、その実体験や乗り越えたエピソードを語ってもらった。
▼クリニーク マーケティング本部 プロダクトグループ マネージャー 矢野聖子さん
プレーイングマネジャーはナンバー2の力を借り思い切って人に任せる
クリニークに入社以来、マーケティング部で4年間スキンケア製品だけを担当していた。5年目にスキンケアとメークアップの部門を統括するマネジャーになった。市場調査やブランド戦略、販売促進プランなどを手がけ、新製品情報を最初に全販売員の前でプレゼンするのも彼女の役目だ。
以前から経験者の少ないメークアップ部門もサポートしていて、実質的には両部門を統括するリーダーと同じだったので、昇格するのは自然な流れだった。
しかし、プレーイングマネジャーとなり仕事量が多くなった。ちょうどシステム変更の時期とも重なり、通常のマーケティング業務に加え、チームメンバーの管理を並行して行わなければならず、担当業務すべてをすみずみまで把握するのは難しくなった。
それまでは、「例えばあるシステムが導入されれば、それを全部把握し、自分なりに最適な利用方法を考えてからメンバーに指示していました」。けれども仕事範囲が広がるにつれて、途中から人に任せる段階で、説明にも手間がかかり、任された人も自分のやりやすい方法を選べず、やりにくくなることが何度もあった。
「結局自分で全部把握するのは無理だと学び、部下の能力を信じて最初からすべて任せることにしました」。もちろん責任は自分が取る。
そして気づいたのは「ナンバー2に心を開いて相談し、尊重することで、自主的に分担してくれるようになった」ことだ。ナンバー2が次のリーダーとしての自覚を持ち、進んで部下たちをまとめるようになったのだ。
「仕事を抱え込まず、方向性だけ示して任せることが、適切な委任(デリゲーション)」。チームやナンバー2を育てるコツでもある。
▼新任管理職時代、こうして乗り切りました!
《Before》プレーイングマネジャーとなりマネジメントと業務の両立が困難
すべて自分で把握したい性分。仕事量が多くても自分でやったほうが早いと、抱え込むことがあった。結局やりかけの仕事を途中で人に任せることになり、かえって時間がかかることも。
《After》相手のキャリアや仕事のやり方を考えつつ、思い切って委任する
思い切って人に任せることにした。現在の状況だけで判断するのでなく、その人のキャリアや販促サイクルなど長期的な視野で、どこで区切ればやりやすいかも考えて任せるとうまくいった。
冨田寿一郎=撮影