【白河】でも、本当に男女とも早く家に帰れるということは、すごく重要ですよ。東日本大震災が起きた年の12月24日、東京は出産ラッシュで産院の予約が取れなかったんです。そのころ生まれた子どもって、ちょうど震災直後にできた子どもなんですよ。節電の問題もあったし、電車の運行も不安定だったから、「出社しなくていい」とか、「もう早く帰れ」みたいな状況だったじゃないですか。つまり単純に男女が同時に家にいる時間を増やすだけで、こんなに子どもが増える(笑)。
【小室】夫婦がリアルに時間を共有することは本当に大事ですよね。
【白河】それに今後は夫婦共働きでないと、経済的に子どもも持てないし、結婚自体できなくなる。地方の未婚者の平均年収は、女性が200万円台、男性が300万円台ですから。少子化や未婚者の問題を解決するためには、もう長時間労働をやめるしかない。そうすることで女性も活躍できるようになるし、男性の家庭進出も進む。長時間労働は、すべての課題が解決へと動きだす“レバレッジポイント”なんです。
ただし企業の自主性に任せていてはなかなか進まない。国が「月◯◯時間以上は働いてはいけない」というように決めることです。でも会議のメンバーには、「2年以内に」とか「こういう規制を」とはっきり言う人は少ないですね。言うと摩擦が生じるからだと思う。だからあえて空気を読まず、私や小室さんが言うしかない(笑)。
【小室】政府の会議などで空気を読まずに発言すると、事前の調整なしに発言してもムダだよという雰囲気が漂うんです。でも私は役人を通すのではなく、今ここにいる政治家の心に直接打ち込むつもりで、2分間という限られた時間内で話すようにしていました。
――長時間労働是正は、なぜこの2年が勝負なのでしょうか。
【小室】女性の年齢別出生率という、実際に女性が子どもを産んだ年齢のデータを見ると、出生率は30歳がピークで、43~44歳で、ほぼ0%です。そして日本の人口において最後のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代がいま42歳。ということは、あと2年で一番ボリュームのある世代の出産年齢が終わる。今が、人口を増やせる最後のチャンスなのです。