【中野】受け入れ家庭には、自分は学生に教えてあげているんだという感覚があって、その金銭ではないギブアンドテイクがとても大事なんだろうと思います。私自身、家事代行やベビーシッターなどさまざまなサービスを使っているのですが、「業者の人」ではなく、一人の人としてお付き合いできるかがとても大事な気がするんですよね。

【上】このほか、月1回、体験で学んだことを同期と一緒に振り返る「キャリア勉強会」や、インターン先の家庭とも交流できるパパママcafeという交流会も。【下】スリール調べ/インターンで子育てを経験することで、将来への自信が持てるようになる。

今、私は家事代行ではタスカジを使っているんですが、うちの子はお気に入りのタスカジさんが来ると掃除を手伝って楽しそうなんですよ。しかも相手は英語でこちらは日本語なんだけど、ジェスチャーで適当にやりとりしてる。家事代行だから「チャイルドケアはお受けしていません」とか、ベビーシッターで、子どもが寝ている間に家事を頼もうとすると「別料金です」とか言われてしまうと、こちらもサービスの受益者という意識になり「じゃあいいです」となるんだけど、そういう契約関係に還元されない部分が肝なんじゃないかと。

【堀江】それは私自身、いろいろな形で子どもをお預かりする中で感じてきました。お金の契約という感じが強いと、毎週3回、2年間通っていたご家庭ですら、そこのお母さんの下の名前も知らないし、どんな仕事をしているかも知らない。お金ではない関係だと、たとえば子どもに「プレゼントをあげたいんです」とか「お誕生日会をしてあげたいです」と提案できるし、仕事の話も聞ける。子どももそういう関係性の中で育っていくものだと思います。

【中野】親側も自然に感謝を示して贈り物をするなど、一緒になって子育てを考えられる関係性が築けるといい。ただ、お金が介在しないほうがいいと言っているわけではないんです。善意に任せて、家庭でやれ、無償労働でやれという流れはよくないと思うので。

【堀江】もし親戚だったとしても価値観は違うもの。子育ての考え方も違えば、お互いにwinに感じるものも違う。お願いする相手が誰であれ、任せっきりの「アウトソーシング」ではなく、「一緒に子どもについて考えていく」ステップを踏まないと、ミスコミュニケーションになってしまう。

【中野】堀江さんのイメージする理想の社会の形みたいなものはありますか?

【堀江】自分たちが助けてほしいことをちゃんと伝えて、それを受け取った人が、それならできるよとお互いに言い合えるようにしていくのが重要だと思っています。今の大学生は、自分の意見を受け入れられた経験が少なく、「自分の意見を発信してもいいんだ」と思えていないケースが多いんですよね。いろんな大人に出会って、自分らしくどんなふうに生きていきたいのかを発信していくのもスリールでやろうとしているところで、学校教育の中にも入れていこうと動いています。