「どうしてもあなたに働いてほしい」と思われることが大切
「××で困っています。何か解決する方法がないか、一緒に考えてみてもらえないでしょうか?」
経営者や人事担当者たちは、仕組みがないことが理由で人が辞めてしまう、特に有能な人が流失してしまうことは、企業にとってマイナスであることを理解しています。しかし同時に、制度として用意をし、仕組みとして固定してしまうことによって発生するデメリットも、十分に分かっているのです。
そこで、この質問です。「困っていることがあるから一緒に解決してほしい」と企業側に依頼をしてみるのです。そうすることで、彼らも頭をひねって考え始めます。
例えば、皆さんがどうしても手放したくない人材ならば、企業は「その人に限って」という枠組みを用意するかもしれません。組織内で融通をしたり、1回限りの簡易的な仕組みを作ったりするなど、いろいろ手を尽くしてくれるはずです。同様の悩み相談が数多く寄せられるようになれば、仕組みとして恒常的なものにすることを検討するでしょう。当事者である皆さんは、支援をしてもらう仕組みを「ありますか」と問いかけて、企業が用意するのを待っている時間はないはずです。自分だけでも優遇されるための道を、まずは確保すべきでしょう。
もちろん、そのためには上手に交渉する必要がありますし、何より自らが組織に求められる人材になっていなければなりません。しかし裏を返せば、それだけの人材なのにもかかわらず優遇措置を取らない企業があれば、人を見る目がない企業ということですし、優秀な人材なのだから別の場所では引く手数多(あまた)なのだ、移ってもいいと考えるのがベストでしょう。そう、企業は優秀な人材が、喉から手が出るほど欲しいのですから。
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。