現代という時代に、落語はとても合っている
べ瓶さんは、落語は、現代という時代にとても合っていると語る。
「落語に出てくる人って基本的に、アホでも貧乏でも皆が楽しく生きてる。賢い人が出てきたと思っても最後はアホやったりしますよね(笑)。何より、嘘がないんです。皆正直に生きてる。今の時代って、面と向かっては言えないのに、ネットではボロカス言うじゃないですか。本当の顔を隠して、生きてる。誰が書いたか分からない、信憑性のないニュース記事を見て、あーだこーだ言う。そんな社会って、なんか窮屈だと思いません? 姿の見えない不特定多数を相手にする暇があったら、今、自分が関わっている目の前の人達とちゃんと向き合って、自分の目で、耳で、皮膚で直接感じたことをもっと大事にした方が絶対に良いと思うんです。
今が幸せでも不幸せでも、目の前の現実から逃げずに自分の現状としっかり向き合う。僕は『あの時あんな事がなければ今僕はこんな事になってないのに』と思うより、『あの時あんな事があったから、今、僕はこうなってるんです』っていう人生にしたい。落語の世界はそれを教えてくれるんです。あぁ、しょせん人間ってこんなもんやんな、って思うんです。僕は落語の世界に、落語の登場人物の不器用さに救われてる」
落語はテレビやラジオなどメディアには乗りづらい、ライブ感も魅力の1つだ。
「言わば、落語は路地裏の名店のようなもの。ダンスや歌のように分かりやすいものでもないし、漫才やコントのギャグのように、フワッと見ていても笑えるものでもない。その噺の情景を想像しないとダメだし、その為には最初からちゃんと聞いていただかないと、最後のバラシで笑えない。一見ちょっととっつきにくいんですけど、一度この味を知ってしまうと、気の合う友達何人かに『ちょっと今度一緒に行かない?』と人を誘いたくなるんですよ」
人なつっこい笑顔と柔らかな関西弁が印象的なべ瓶さんは、落語をしている時も、撮影の時も、取材中もとにかく全力投球で一生懸命だった。取材後、この記事の連載名(次世代イケメン紳士録)を伝えたところ、「イケメンは勘弁してください」と頭を抱えていたが、そのエネルギーにひきつけられるファンはこれからますます増えそうだ。
大阪府大阪市生まれ。スポーツニッポン新聞大阪本社の新聞記者を経てFM802開局時の編成・広報・宣伝のプロデュースを手がける。92年に上京して独立、女性誌を中心にルポ、エッセイ、コラムなどを多数連載。俳優、タレント、作家、アスリート、経営者など様々な分野で活躍する著名人、のべ2000人以上のインタビュー経験をもつ。著書には女性の生き方に関するものが多い。近著は『一流の女(ひと)が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など。http://moriaya.jimdo.com/
ヒダキトモコ
写真家、日本舞台写真家協会会員。幼少期を米国ボストンで過ごす。会社員を経て写真家に転身。現在各種雑誌で表紙・グラビアを撮影中。各種舞台・音楽祭のオフィシャルカメラマン、CD/DVDジャケット写真、アーティスト写真等を担当。また企業広告、ビジネスパーソンの撮影も多数。好きなたべものはお寿司。http://hidaki.weebly.com/
撮影=ヒダキ トモコ