芸歴が枷(かせ)にならないよう、生きざまに合った落語をやりたい
東京は神保町にある「らくごカフェ」で、べ瓶さんの落語を聞いた。らくごカフェは、落語のないときはカフェとして営業しているライブスペースだ。店長の青木伸広さんはフリーライターでもあり、若手の落語家をどんどん出演させる先駆けとなった店である。高座がしつらえられると、50席の寄席になる。
この日は、桂三度さんとの「べべサンド」という二人会だった。会場は20~40代の男女で満員になっている。ゲストには女道楽という三味線と漫談を演じる内海英華さんが登場し、華やかな雰囲気で、3人のトークコーナーも盛り上がった。
べ瓶さんのその日の演目は「餅屋問答」。歯切れのよい台詞とテンポの良さが、言葉のグルーヴを巻き起こすようだった。
「僕は今年芸歴15年目。東京の落語界なら、二つ目から真打になるところなんです(編注:)。どうしても15年選手という目で見られる。その15年という芸歴が枷(かせ)になるんです。僕自身、まだまだやと思ってるんですけど、もうちょっと上手く見せないとあかんのかなとか、所作をきれいにしないとダメなのかなとか、マクラでももうちょっときちっとしゃべらなあかんのかなとか、余計なことを考えてしまう。でも急にそこに収まってしまうのも変でしょう。結局、生きざまに合った落語をやるしかないんですよね」