組織から期待されていることを、改めて整理してみる機会
さて、ここでお節介な一言を。部下になった人たちと接点を持つことは、新人管理職(変な言葉ですね)としてはとても重要なことです。しかし、その前にもう一つやっておきたい作業があります。それは、組織から期待されていることを改めて整理しておくということです。管理職個人、つまりあなた自身に期待されていること、そしてあなたの任される組織に期待されていること。これらの多くは混同されがちですが、実は似て非なるものです。
属している組織から何を期待されているのか、それが不明確でよく分かっていない状況で働くことは、とても難しいはずです。何をすれば評価されるのかも分からないし、そもそも自分がやっていることが報われるのかどうかも見えてこない。その状態で「頑張れ、もっと頑張れ」と言われても無理な相談です。ですから、まずは組織は自分にどんなことを求めているのか、改めて整理してみることをお勧めします。
その上で、自分が求められていることを達成するために、自分にはどんな能力やスキルが必要なのか、きちんと確認しておきましょう。どういう能力を身につける必要があるかという自覚のないまま仕事をしてしまうと、そもそも求められる期待に応えることもできませんし、何より、自分自身の成長を阻害してしまいます。今までの経験から皆さんも骨身に染みているでしょうけれども、成長しない上司ほど困った存在はありませんから。
そうした後、自分に任されたメンバーに求めることを把握すると、彼らにどんな期待をし、どんな指示をして、どんな成長を促す機会を提供すればいいのか、おのずと分かってくるはずです。
管理職がやるべきことは、実はシンプル
間違えてはいけないのは、あなた個人と組織、どちらに期待されていることを優先するか。個人ありきで考えてしまうと、マネジメントはうまくいきません。属している組織が、そのメンバーたちに何を期待しているのかということを、一番の軸にする必要があるのです。
イマドキの管理職がすべきことはとてもシンプルで、部下が自分の能力を最大限発揮でき、その延長線上に属している組織から最高の評価をされ、自分自身が成長したという実感を得られるようにしてあげることです。文字書いてしまえば当たり前のことですが、実際にやろうとするとこれがなかなか難しい話。
一生懸命にやったことが無駄にならないように、無駄にならないどころかきちんと評価されるように、評価があったことで成長を自覚できるように……このつながりを作り出すためには、組織の期待を理解すること、そして、そのために自分が何をすべきなのか、部下に何をしてもらうべきなのかを考え抜くこと。あなたがやるべきことは、ここに尽きてしまうのです。
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。