女性活躍は経営戦略――東急リバブル
男性中心の古い体質が残る業界と言われる不動産業界で、女性の働きやすい職場づくりをめざし、女性活躍推進の取り組みを始めたのが東急リバブルだ。
東急リバブルにとって、女性活躍推進は“経営戦略”そのものである。きっかけは、2012年7月に就任した中島美博社長(現会長)が、「変革し続けること」を成長戦略と位置づけ、「お客様評価No.1」「生産性No.1」「働きやすさNo.1」という3つの業界No.1を目標として掲げたことだった。この目標達成のためには、ダイバーシティの推進が欠かせないとして、「ポジティブアクション(女性活躍推進)」がスタートし、2013年、業界では初めて社内にダイバーシティ・プロジェクト・チームが発足した。
まずは社内に女性社員のワーキンググループを設置し、営業職を中心に女性たちの活躍を妨げている課題の抽出、対応・改善策について提言を行った。
その提言をもとに、まずは第一段階として2013年から14年にかけて育児休暇制度や時短勤務制度の改定や「くるみんマーク」取得など、育児両立支援の制度の整備、導入をはかった。「事業所内休日保育所の開設」と土日出勤に保育費用を半額負担する「休日保育費用支援手当の支給」は、業界初の試みだ。
第2段階の2013年から15年にかけては、女性社員や管理職の意識・意欲の変革をめざし、研修や施策を行った。特に管理職約500人に向けたダイバーシティマネジメントセミナーでは、「女性に魂が震えるような仕事の体験をさせてあげるのがマネージャーの仕事」とトップからもメッセージを送った。
また、2年目以上の全女性社員に対して期待を伝えるポジティブアクションセミナーを行った。ダイバーシティ推進課の野中絵理子氏は「このセミナーは、女性社員たちからどのような反応があるか心配だったのですが、『これからも頑張ろうと前向きな気持ちになれた』と、好評でした」と手応えを感じたという。
こうした施策により、女性総合職採用比率、女性営業職の割合も上がり、一般職から総合職へ転換するコース転換制度への応募者も2012年比5倍以上も増加するなど、成果が目に見えるようになってきた。女性管理職も現在6名となり、取り組みが評価され、2015年には均等・両立推進企業表彰の「東京労働局優良賞」を受賞している。
このように取り組みは3社3様だが、3社とも女性活躍推進を自社の経営課題解決の一環として行っているところに、共通点がある。女性活躍推進を成功させるポイントは、単に女性だけの問題と捉えず、社員全体の働き方改革、風土改革の好機と捉えて取り組むところにありそうだ。
撮影=岡村隆広