なぜ、長時間労働は問題か
そもそもなぜ長時間労働が問題なのか? いったいどこからが長時間労働なのか?
最近の学生は『残業=ブラック企業』と思い込んでいるぐらい、残業を警戒しています。しかし、社会人となった以上は「会社で残業があるのは当たり前」と思うでしょうし、もっと上の世代にいたっては「残業代がないと家計が回らない」という人もいるぐらいです。下町ロケットでも、刑事物のドラマでも、プロフェッショナル仕事の流儀でも、「深夜まで仕事をがんばる」シーンが一番盛り上がる。夜電気がついているのを見て、「あいつら、がんばっているな……ふふふ」と社長が言ったり、「社長! 昼夜問わず働いて完成しました!」っていうシーンがクライマックスになる。
日本は「昼夜忘れて長時間取り組む働き方」が「尊い」国なのです。そのほうが短期的には効率が上がる方もいることは事実ですし、最終的には「働き方が人それぞれ、その人の時間軸それぞれで選べる」というのがいいのですが、まずはこの「長時間が当たり前」というデフォルトを何とかするべきではないでしょうか?
なぜ日本には「過労死」を含むブラック企業問題が起きるのか、そして普通の会社員には「残業がデフォルト」なのか?
当然の疑問の答えを『ルポ過労社会』(中澤 誠著/ちくま新書)からいくつか抜粋します。