エキナカ事業の立ち上げ人として有名な鎌田さん。前例がない新規事業を進めるときの根拠は「面白いから絶対うまくいく」という直観的な定性論。新天地でも新規事業の開拓力を期待される。
開業日が迫る中で、取引先側から間に合わない、と怒りの声が上がったのは開業2週間前の深夜のことだ。
「『あんたたち、この日程で引き渡すと言っただろう。これじゃ、お客さまにきちんとサービスできないから、今からでも出店を取りやめる』と。もう平謝りするしかありませんでした」
鎌田さんと若手メンバーで構成されたチームは体力的にも精神的にも追い詰められた状態だった。
「私も朝7時すぎに出社し、夜中の0時15分の電車で帰る毎日。お風呂につかりながら一瞬寝てしまうこともあるくらいでした」
他のメンバーも同じような生活が続いていたが、音を上げる者はいなかった。
「後から、『あの時は、死にそうだった』と言われましたが、みんなが『この仕事は自分しかできない』と思っていたのでモチベーションを保てたのでしょう。私からよく話したのは『会社のことを考えるのではなく、自分の目の前にある仕事をしっかりやろう』ということです」