長期避難生活。難民を襲う「貧困」

シリア紛争が起こったのは2011年。もう5年になります。なかなか解決に向かわず、問題は長期化するばかり。逃げ延びてきた当初は、希望を抱いていた難民の方々も、もはや避難生活に絶望感しか抱けなくなっています。

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(C)UNHCR/M.Henley  (People walk towards bus in Croatia)クロアチアにて。バスに乗るため長い列をなす難民。陸路での長時間の移動は、子供や老人にとって決して楽ではない。

その理由の一つが、厳しい生活環境です。砂漠にあるキャンプは、樹木がないので夏場には50℃にもなるのに対し、冬は積雪があるくらい寒いんです。昨年、ヨルダンやレバノンのキャンプではすごく雪が積もり、シェルターの屋根が抜けたことがありました。また、シェルターの床下は舗装されていない上に、この大地は水はけも悪く、雨や雪が降ればぬかるみが出現します。そんな過酷な環境で、いつ終わるともしれない避難生活を送らなければならないんです。次第に心を閉ざしてしまうのも無理はありません。

二つ目の理由が、彼らの資金問題です。避難生活の長期化により、持参した資金はとっくに底をついています。避難先で仕事に就くことができればいいのですが、周辺受け入れ国の多くでは、難民が自国民の職を奪ってしまうのではないか、という恐れから、公式には就業を認めていません。仕事に就くことができない、あるいは仮に就けたとしても、足元をみられて非常に低賃金で労働させられています。

例えばヨルダンでは、難民たちの貧困ぶりは甚だしく、ヨルダン国民の最低レベルよりもさらに劣悪な状況にある人たちが多い。これでは限界がきて当然です。ここにずっといてもどうにもならない、ましてや故郷に帰ることもできない。もしかしたらヨーロッパに行けばチャンスがあるかもしれない。一縷(いちる)の望みが、人々の移動を後押ししているのです。