シリア人難民は、なぜドイツを目指すのか?

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(C)UNHCR/M.Henley (Austrian bus to transport refugees)難民がドイツへ向かうにはいくつかの国境を越えなければならない。そのため、長距離バスの中継地点は混雑を極める。

ドイツはシリア危機に関して、人道的な思想のもと、受け入れを表明しています。アンゲラ・メルケル首相の政治的なリーダーシップによるものと思われていますが、決して彼女の独断ではありません。

実はドイツには、第二次世界大戦後、当時の西ドイツで、戦後復興の過程でトルコ、ポルトガル、アフリカ諸国など、多くの移民を受け入れていたという土壌があります。その中にシリアの人々もいて、シリア人がドイツの戦後復興に深く携わっていたのです。

そんな歴史的背景の中で、ある程度の条件の下、市民権も得られ、ドイツに定住するシリア人たちもいました。やがて、シリア人のコミュニティができ、才覚のある人は商売で財を成したり、政治に参加するなど、地元の有力者になった人たちもたくさんいます。そのようなシリア人にとって、ドイツは第二の祖国なんです。

ドイツ内にシリア人コミュニティがあることは、シリア難民にとって夢や希望につながっています。ドイツに住むシリア人の方々が、資金的な支援を始めたり、遠い親戚を呼び寄せるのはもちろん、縁やゆかりのない方々もなんとか受け入れることはできないだろうか、と、それぞれの地域に働きかけをしています。

ドイツは州政府が多くの自治権を持っているので、州単位で難民の受け入れ話が盛り上がったり、影響力のある地元の教会が、人道的な観点で受け入れの動きを起こしたり。草の根レベルだった地方の難民受け入れ運動が、大きなうねりとなって中央政府を動かしたのです。EU諸国の中でいち早く難民の受け入れを表明し、受け入れ枠をつくり、予算をつけたドイツには、こうした歴史があったのです。