カメラを勧めるシナリオを考えてみよう
例をあげてみます。一眼レフカメラを誰かに勧める場合のシナリオを考えてみてください。相手がカメラ好きな人の場合とカメラに詳しくない初心者ではシナリオが変わってきます。図は両者のA地点とB地点、そしてその間に起こる気持ちの変化を表しています。
このように同じものを勧めるプレゼンテーションでも相手に起こす変化は違います。A地点とB地点が異なるからです。特に重要なのはA地点です。A地点が外れている場合、つまり相手が今どんな心境にいるかを見誤っている場合、ほとんどのメッセージや情報が変化を起こせず、空振りに終わることもあり得ます。
多くのプレゼンテーションが、「この商品はすごいです。あんなことも、こんなこともできます」、もしくは「あれも重要です。これも重要です」と情報過多に陥っている原因は、ひと言で言えばシナリオがないからです。シナリオが描けていれば、相手の気持ちに変化を与えるために必要な情報やメッセージに絞られていきます。
プレゼンテーションは「メッセージありき」ではない
この“変化のシナリオ”を考えるにあたり、注意したほうがよいことは2つあります。一つ目は、「メッセージありきで考え始めないこと」。あくまでも相手の気持ちに変化を起こすことを先に考えます。メッセージとは「△△だから○○すべきです」という「主張と根拠」が揃ったもので、プレゼンテーションの根幹を成す伝えるべきことです。しかしながら、このメッセージから考え始めてしまうと、自分本位のシナリオになってしまい、相手の変化が起こせないのです。
例えば相手のA地点が「全く興味なし」の場合と、「興味あり」の場合と、「そういうのは嫌い」という場合では、メッセージが同じだとしても変化の起こし方が違います。メッセージを考えることはとても重要なのですが、それを伝える時には相手の変化に意識を向けましょう。
二つ目は、「相手の熱意をあてにしない」ということ。プレゼンテーションなど話を聞いている時に集中力が持つのは5分程度と言われています。つまり、3~5分に1回変化を起こさないと集中力が途切れ、「パワポ死」の状態に陥ってしまうのです。相手が熱意を持って辛抱強く話を聞いてくれると思っていると、肝心のところで集中力が切れてしまっているかもしれません。
私がコンサルタントの駆け出しだった頃によく言われたのは「経営層の集中力はとても短い。テンポよくプレゼンしろ」ということ。多忙を極める経営層はそれだけ考えることも多く、もたもたしていては他のことを考え始めてしまう訳です。つまり、3~5分おきに相手の気持ちに変化を起こさないと、最後まで聞いてもらうことができないのです。