「父の影響」は見逃せない大きさ

取材をしながら、彼女たちが理数系を選んだ背景に家庭環境が大きく関係していることも興味深い発見だった。もちろん、数学や理科が得意だったというのは承知しているが、3人中2人が“お父さんの影響”を挙げている。

「システムエンジニア(SE)の父の影響」と話すのは川端さん。中学生の頃からパソコンに親しんでいたそうで、「父がパソコンのことで人を助けているのをみてかっこいいなと思っていた」と、理系に進んだ理由の1つには“父の背中”があったようだ。栗本さんは、中学校で理科の先生として教壇に立つお父さんの意向もあって理数系を選んだという。子供の頃から家族で出かけるときは科学館や博物館が「お決まりのコース」で、地層をみて解説してくれることもたびたび。「お父さんと早く対等に話ができるようになりたいと思っていた」という。最近では栗本さんの方が知識がある分野もあり、教えてあげることもあると嬉しそうに語る。

宮本知佳さん

育つ環境が大きく影響しているのは、自分の意思で中高一貫の女子校から情報工学部に進んだ宮本さんも同じ。子供の頃に電子ロボットおもちゃの「ファービー」で遊んだり、カレンダーの裏紙をもらっては絵を描いたり切ったりしておもちゃを作って遊んでいたという。そして3人ともNHKのTV番組『つくってあそぼ』を観ていたという共通点もあった。

最後に「子供を理数系好きにしたい親へのアドバイスは?」と聞いてみた。「不思議だなと思う体験をさせること」(宮本さん)など、全員が挙げていたのが「体験」や「機会」を提供する大切さだ。川端さんは「理数ができれば、こういう大学に行けて、こういう職種につけて……と目標になるものを見せてあげるとよいのかも」とアドバイスをくれた。

理系女子は、大学生全体のわずか12%しかいないし、世界的に見ても理系分野では女性より男性の活躍が目立つ(参考「なぜ理系に進学する女子が少ないか」:http://president.jp/articles/-/11293)。しかし文系に進むか理系に進むかは環境や教育といった後天的な要素で決まるのであって、女性に理系の学問が向いていないわけではない。子供、とくに女の子を理数系にと考えているなら、環境づくりが重要といえそうだ。