体験を共有できるボディシェアリング(※1)など、HCI(※2)研究で世界的に注目を集める、ITベンチャー経営者であり教育者の顔も持つ、マルチなインターフェイス研究者。
H2L代表取締役/琉球大学工学部教授 玉城絵美さん
撮影=荒井孝治
H2L代表取締役/琉球大学工学部教授 玉城絵美さん

リケジョが増えない理由は、女性の思い込みにもある

2021年、琉球大学で女性初の工学部教授に就任した玉城絵美さん。後進の女性研究者を育成することで、母校に恩返しがしたいと語る。

「工学部への女性の入学者が少ないうえ、能力があっても修士や博士課程への進学に悩む女性が多いと感じています。専門性が高くなると男性にはかなわないという思い込みがあるようです。しかしそれは誤解。能力に性差がないことは研究データが証明しています。企業は慢性的なIT人材不足ですから、工学系の学位があれば、男女問わず理想のキャリアや収入に近づけると思います」

(写真左)2011年、東京大学大学院で博士号取得。(写真右)12年、東京大学大学院博士課程修了時、総長賞を受賞。その賞状と記念品。
(写真左)2011年、東京大学大学院で博士号取得。(写真右)12年、東京大学大学院博士課程修了時、総長賞を受賞。その賞状と記念品。

かつては玉城さんも性差による偏見に戸惑うことがあった。

「当初は男性に現場の主導権を譲ろうと思いがちでしたが、結果的に研究をリードするのは私の役目。男性中心の環境でマイノリティーを経験したことで、逆に性差への固定観念の殻が剥がれるのを感じました」

※1 ボディシェアリング(BodySharing®):キャラクター、ロボットや人などとユーザーが、さまざまな身体感覚を相互に共有し、体験を共有する技術。ここでいう身体感覚とは、視覚や聴覚だけでなく位置覚、重量覚や抵抗覚などの固有(深部)感覚を含む。
※2 HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション):人間とコンピュータの間の情報交換についての研究分野。