(3)復職後のビジョンを、上司や、そのまた上司に伝えてる?

産休・育休など長期休暇を取得する、あるいは時短勤務制度を利用する際には、自分が会社で働き続ける意思があることと、その際にどんな業務において会社に貢献できるか、その内容と根拠を伝えておくことです。

会社も、力を付けた社員にはできれば働き続けてほしいと思うものです。会社と個人は本来対等な関係のはず。人の一生で、仕事だけに100%力を注げる時期と、そうでない時期があるのは仕方がないことです。であれば、それを雇う側も雇われる側も受け入れて、お互いに何を提供し合えば成果につながるのか、休みを取る前、勤務時間が短くなる前に十分話し合っておく必要があります。

既に子供を出産した後で、そのような準備を行ってこなかったという方。今からでも遅くはありません。あなたや子供、家庭が置かれている状況、またどうやったら働き続けられると考えているかを、言葉にして周囲に伝えていきましょう。産んでみて初めて自分事として認識できることだってあります。前提として「働き続けることで、会社に貢献したい」という覚悟を感じさせることができていれば、“自分勝手”と受け止められずに、耳を傾けてくれるはずです。そんなあなたの姿をお手本とする後輩がいます。「今さら」と思わずにチャレンジしてみてください。

大切なのはコミュニケーションに基づく関係性

実際のところ、産休・育休や時短勤務などの制度の利用に対して、良い顔をしない会社も少なくありません。長時間働けないケースとして、育児を理由としたものがクローズアップされがちですが、昨今では介護を理由としたものも増えています。また年代をみると、介護の場合は育児の場合よりも、要職についている人の割合が高いと思われます。育児中の女性にすら対応できないような職場は、今後の企業存続を考えると「危険水域」にあると言えます。

一方、数ある制度を利用する側は、そうした環境を「恵まれない」と嘆こうと、目の前の育児・介護をこなしながら働き続けなければなりません。ではどうするか。一人ひとりで異なる複雑で難しい状況を、会社や上司、同僚に分かってもらうためには、普段から積極的にコミュニケーションをとることで信頼関係を築いておくことが必要です。それがベースにあれば、次の一手がぐんと打ちやすくなります。またこの先、育児・介護の別を問わず、制度を利用する側、受け容れる側の立場が変わる日が来たときにも、その関係性は生きてくるはずです。すべては日々の積み重ねから、です。

今回は「今、まさに子育ての不安や悩みに直面しているあなた」へのアドバイスを行いました。次回は「いつか産もうと思っているあなた」へ、伝えたいことを書きますね。

小紫恵美子(こむらさき・えみこ)
中小企業診断士。
経営コンサルタント事務所Office COM代表。二児の母。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、のちに退職。10年間の“ブランク”を経て、独立開業。
現在は企業研修講師や中小企業への経営支援、執筆活動を行う。企業研修では会計、ロジカルシンキング等ビジネススキルを伝えるとともに、女性経営者を中心に数値とロジックに基づいた経営の重要性を伝える自主セミナーを展開。
最近は、これまでの実績と、自身の大企業勤務→専業主婦→子育てしながら独立開業、という経験を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている。「活き活きと働くオトナが増える社会」を目指して日々活動中。