「子供が産まれたら、仕事、どうしよう? ねえ、あなた、聞いてる?(怒)」
「上司に、最近お子さんよく熱出すね、って言われちゃった……」
「こんな働き方で子育てできるのかな……どのタイミングならもう1人産めるんだろう」
パートナーとこのような会話をしている方はいらっしゃいませんか。今でこそ「結婚したら仕事はどうするの?」などとは聞かれなくなったものの、妊娠・出産・育児となると、話はまた別。仕事との「両立」をどうすべきか、働く女性に共通する悩みの種ですよね。ちまたに“イクメン”が増えてきたとはいえ、育児の負担は母親に多くかかりがち。また“産む性”である女性には、身体や心の変化があります。さらに子供の体調は予想がつかないことが多く、個人差もあるので、どうしても上のような悩みや不安が増えます。
今、こういった事態に直面している方、またいつか産もうと思っている方に、不安を和らげるコツをお伝えしていきます。今回は「今、まさに子育ての不安や悩みに直面しているあなた」へのアドバイスです。
■人生はワークとライフ「だけ」ではない
プレジデントウーマンオンライン読者世代の頑張る女性にまず、そしてぜひ伝えたいのは、子育てをしながらも、「頑張り過ぎずに、自分だけのための時間を5分でも10分でもとろう」ということです。
以前、ワークライフ・バランスについてインタビューした女性経営者の言葉で、とても印象に残っているものがあります。それは「ワークとライフ、だけじゃないと思うんです。ワーク=仕事、ライフ=育児や介護、って思われているけれど、私たちが生きていくときに、ライフといわれるのは育児や介護だけではないはず。純粋に自分自身のための時間だって、あってもいいですよね」ということでした。
それは、自分を優先しろということではなく、「子供のために」という大義名分の下、自分自身が疲弊し、頑張り過ぎて身体を壊したりしては、それこそ子供のためにならない、ということ。
例えば子供が寝ている間に好きなお茶を飲む、というようなちょっとしたことからスタートしてみてください。子供の状況に合わせてできることを少しずつ取り入れることで、「自分のエネルギーチャージの時間」をとりましょう。時間のロスに感じられるかもしれませんが、逆に仕事や子育ての活性化につながります。手いっぱいで頑張っている人がさらにこうした時間をとるには、強い意志が必要です。周りの人も「エネルギーチャージ」に寛容であってほしいと願います。
制度を気持ちよく活用するためには準備を
日本の子育て支援制度は、諸外国と比べても遜色ないものになってきています。ただし、皆さんが感じているとおり、その運用は職場によってかなり濃淡がある。それは事実です。
ここで産休・育休をはじめとした各種制度を利用する側の注意点として、伝えておきたいことがあります。それは「企業は社員の力を結集して、利益を出し続けなければ継続できない」という経営側の視点を持つということです。その観点に立てば、会社が用意した各種の制度を利用する権利があるのはもちろんとしても、同時に、会社が利益を出せるよう、自分が貢献していく必要があることが理解できると思います。
だからこそ、日ごろの「上司や周囲への働きかけ」が肝心。賢い仕事女子は、“事が起きてから行動”ではなく、段取りを怠りません。“普段からできる準備”、ご存知ですか? 項目を3つ挙げますので、一緒にチェックしていきましょう。
(1)上司と、おしゃべりしてる?
仕事観や子育てに関する考え方、働き続ける意思などを、普段のランチやちょっとした会話の中で伝えておくことをお勧めします。普段は没コミュニケーションにも関わらず、いきなり上司に「権利だから」と産休・育休や時短勤務を申請したり、子供の体調変化による突発的な休みを取得したりするのは、受け入れる側の感情的な壁を高くしてしまいます。
本来は、会社の仕組みとして、上司と部下とのオフィシャルな面談が毎週もしくは隔週に1回でも、30分ほど設定されているとよいのですが、それがない場合には、普段からコミュニケーションを積極的にとり、信頼関係を作っておきましょう。もし、この記事を読む中に管理職の方がいらっしゃいましたら、ぜひ、こうした仕組みを普段の仕事の中に取り入れてほしいと思います。女性活躍推進のみならず、今後さらに広がるであろうLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字。性的少数者を指す用語として使われることが多い)を含めたダイバーシティの理解促進のためにも、日々のコミュニケーションを大事にしてほしいのです。
(2)今抱えている仕事を、同僚に電話1本で引き継げる?
自分や子供の入院などで急に1週間、会社を休むことになったとします。電話で30分話せば、明日からあなたの仕事を他のメンバーが代わりに執り行えるでしょうか?
電話1本で仕事を引き継ぐためには、まずはあなたが「誰のために・いつまでに・何をすることになっているか」が明確でなければなりません。それが周囲に共有されているのが理想ですが、チーム内での仕事の確認は週に1回、もしくはそれ以下というところも多いでしょう。そこから説明をしなければならない状況でも、自分自身の仕事が整理されていればスムーズに進みます。必要な書類や資料がきちんと整理整頓された上で、同僚がすぐ分かる場所に保管されている。引き継ぎを依頼する側がしておくべき最低限のことです。
業務の引き継ぎの有無に関わらず、本来、仕事はすべて「見える化」されている必要があるのです。「子育ての不安や悩みに直面していないあなた」も、自分の仕事のやり方を振り返ってみてくださいね。
(3)復職後のビジョンを、上司や、そのまた上司に伝えてる?
産休・育休など長期休暇を取得する、あるいは時短勤務制度を利用する際には、自分が会社で働き続ける意思があることと、その際にどんな業務において会社に貢献できるか、その内容と根拠を伝えておくことです。
会社も、力を付けた社員にはできれば働き続けてほしいと思うものです。会社と個人は本来対等な関係のはず。人の一生で、仕事だけに100%力を注げる時期と、そうでない時期があるのは仕方がないことです。であれば、それを雇う側も雇われる側も受け入れて、お互いに何を提供し合えば成果につながるのか、休みを取る前、勤務時間が短くなる前に十分話し合っておく必要があります。
既に子供を出産した後で、そのような準備を行ってこなかったという方。今からでも遅くはありません。あなたや子供、家庭が置かれている状況、またどうやったら働き続けられると考えているかを、言葉にして周囲に伝えていきましょう。産んでみて初めて自分事として認識できることだってあります。前提として「働き続けることで、会社に貢献したい」という覚悟を感じさせることができていれば、“自分勝手”と受け止められずに、耳を傾けてくれるはずです。そんなあなたの姿をお手本とする後輩がいます。「今さら」と思わずにチャレンジしてみてください。
大切なのはコミュニケーションに基づく関係性
実際のところ、産休・育休や時短勤務などの制度の利用に対して、良い顔をしない会社も少なくありません。長時間働けないケースとして、育児を理由としたものがクローズアップされがちですが、昨今では介護を理由としたものも増えています。また年代をみると、介護の場合は育児の場合よりも、要職についている人の割合が高いと思われます。育児中の女性にすら対応できないような職場は、今後の企業存続を考えると「危険水域」にあると言えます。
一方、数ある制度を利用する側は、そうした環境を「恵まれない」と嘆こうと、目の前の育児・介護をこなしながら働き続けなければなりません。ではどうするか。一人ひとりで異なる複雑で難しい状況を、会社や上司、同僚に分かってもらうためには、普段から積極的にコミュニケーションをとることで信頼関係を築いておくことが必要です。それがベースにあれば、次の一手がぐんと打ちやすくなります。またこの先、育児・介護の別を問わず、制度を利用する側、受け容れる側の立場が変わる日が来たときにも、その関係性は生きてくるはずです。すべては日々の積み重ねから、です。
今回は「今、まさに子育ての不安や悩みに直面しているあなた」へのアドバイスを行いました。次回は「いつか産もうと思っているあなた」へ、伝えたいことを書きますね。
中小企業診断士。 経営コンサルタント事務所Office COM代表。二児の母。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、のちに退職。10年間の“ブランク”を経て、独立開業。
現在は企業研修講師や中小企業への経営支援、執筆活動を行う。企業研修では会計、ロジカルシンキング等ビジネススキルを伝えるとともに、女性経営者を中心に数値とロジックに基づいた経営の重要性を伝える自主セミナーを展開。
最近は、これまでの実績と、自身の大企業勤務→専業主婦→子育てしながら独立開業、という経験を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている。「活き活きと働くオトナが増える社会」を目指して日々活動中。