旗振り役は影響力の強い男性
8年前にオーストラリアの連邦人権委員会性差別担当のコミッショナーとして職務に就いたエリザベス・ブロデリック氏は、当初、女性が連帯して積極的に活動することで既存のシステムを壊し、ジェンダー問題を解決しようと考えていた。しかし一向に進展が見られなかったため、「女性を正す」という方針から、「影響力の強い男性を巻き込む」という方針への転換を行った。ブロデリック氏がリーディングカンパニーのトップや政府関係者、軍部司令官に直接連絡をとり、「男性の集団的な声で、女性をとりまく環境を変えよう」と呼びかけ、組織されたのがMale Champions of Change(以下、MCC)だ。男女の双子の子をもつ企業トップには「女性にとって平等ではない社会がこのまま続けば、あなたの子供のうち、女の子のほうにはチャンスが与えられないだろう」と説得したという。
MCCの具体的な活動事例としては、パネルプレッジ(Panel Pledge)を挙げた。これは会議などへの参加を求められた際、スピーカーとして女性が参加しない集まりの場合には参加を拒否するというもの。必然的に女性の参加が促進されるということで、コストはかからないが大きな影響力をもつ方法として活用されている。
日本版MCCの生みの親は、前女性活力・子育て支援担当大臣の森まさこ氏だ。ブロデリック氏の大臣室訪問をきっかけに、すぐさまメンバー集めに着手した。その名は「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会行動宣言」。創立メンバーのひとり、千葉銀行取締役頭取の佐久間英利氏は、会での女性活躍推進に関する真摯な議論がヒントとなり「地銀64行による人材バンク」が生まれた、と発表した。夫の転勤に伴い、退職を余儀なくされる女性行員が後を絶たない。そこで、夫の転勤先にある地銀での受け入れを人材バンクが調整し、地銀間で異動を行うことで、仕事を継続することを可能にした。千葉から沖縄へ、福岡から千葉へと、現在も14名の女性が正社員としてキャリアをつなぎ活躍している。「人材バンクの設立に、地銀の頭取64名全員が即同意した。女性に働き続けてほしい、気持ちではみんなそう思っていた」と佐久間氏は語る。